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【「フォールガイ」評論】映画の歴史を支えてきたスタント・パーソン、彼らへの想いが詰まったアクション・コメディ

映画.com 2024年8月18日 15時0分

 リー・メジャース扮する映画スタントマンを主人公に、派手なアクションと追跡劇が持ち味だった「俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ」。本作はこの1980年代の米人気テレビシリーズを映画としてリメイクしたアクション・コメディだ。監督はやはりスタントマン出身のデビッド・リーチ。主人公のタフガイにライアン・ゴズリング。その恋人で映画監督役にエミリー・ブラント。俺様キャラの映画スターにアーロン・テイラー=ジョンソン。

 出世作「ドライヴ」に続き再び映画スタントマンを演じたゴズリング。今回は撮影現場の裏側を深掘りしており、様々な特殊機材や裏技スキルが次々に飛び出す。SFXやAIアクターなどのデジタル技術に呑み込まれつつあるハリウッドにあって、命懸けのアクションを淡々とこなしていくスタント・パーソンたちの昔気質な生き様がクールに映し出される。また、古風なスプリット(分割画面)演出といったメタギャグや、有名アクション作品のセリフやパロディも散りばめられ、映画が誕生して以来、体を張って演じたスターと、それを支えたスタントたちに対するラブコールのようだ。

 また、男女の恋愛観の違い、男性特有のプライドと女性スタッフのキャリア、セレブの実情などのプロットを絡め、ジェンダーを意識した脚本にも仕上がっている。1930年代スクリューボール・コメディの再現とも評されており、ゴズリングとブラントという人気俳優たちによる洒落た会話の応酬にも注目だ。男臭い設定になりがちな題材に、ロマンスを組み込んだことで幅広い層が見やすい作品となっている。

 オリジナル・ドラマへのリスペクトも忘れず、愛車をゴツいGMCシエラで揃え、それが派手なジャンプをするのもお約束のカー・スタント。もちろんドラマ・キャストのカメオ出演もあり、銃撃戦の最中にリー・メジャースのもう一つの当たり役「600万ドルの男」風の効果音が使われているのも嬉しい。

 前述「ドライヴ」や「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命」「ナイスガイズ!」などスタントや映画業界を題材にした作品が多いゴズリング。最近は子育てを意識しダークな役柄を控えているそうで、そういう意味では偉大なる先達たちへのリスペクトを捧げつつ、エンタメに全振りした本作はまさにうってつけの作品と言えるだろう。なお、作中のスタント・ドッグ「ジャン・クロード」は有名俳優に因んだ名前だが、かつてゴズリングが仏語で躾けられたベルギー・シェパードを飼っていたことがあり、そのオマージュの意味もあるとのこと。今回プロデューサーでもあるゴズリングだからこそ出来るお遊びなのだろう。

(本田敬)

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