川上さわ監督初の長編映画「地獄のSE」が10月26日公開される。このほど、ポスタービジュアルと場面写真が披露された。
川上監督は、19歳の時に初めて撮った映画「散文、あるいはルール」(2022)が同年のカナザワ映画祭でグランプリを受賞。そのスカラシップ作品として川上が20歳の時に撮った初長編映画が本作「地獄のSE」(2023)だ。本作は海外の映画祭にも複数ノミネートされ、川上のユニークな独創力で組み立てられた異質な劇空間に数多の観衆が驚き、戸惑い、そして魅了された。
茫々とした特殊画面、セリフを異化させる字幕効果など、リアルとフィクションのズレを意図的に取り込み、これまでのどの映画にもない座標に物語の舞台を用意する。演者の中にくすぶるものを増幅させるように当て書きした人物像、制御しきれない魅力が画面と一体化したスタンダードサイズ、更には登場人物の心象風景をグロテスクに表現したぽに青のアニメーション、地獄を奏でるhonninman の電子音など、本作は川上が信頼を寄せる表現者たちの創意の結晶でもある。
ポスタービジュアルは、ZINE作家のmiyuwakiが手掛けたもの。一度印刷したポスターを手で折り畳み、その折り目もナマの模様として取り込んだ異質なデザインは、本作ののオルタナティブな風体と共鳴している。映画は10月26日からポレポレ東中野で公開。
<あらすじ>
中学生の天野モモ(14)は電車の中で町に狂いの雰囲気が解き放たれる瞬間を目撃するが、天野は恋に忙しかったため気に止める余裕がなかった。天野の想い人である早坂にに子(14)はその狂いの波に乗る。海が近くなった町で、中学生たちが恋をして愛をしなかったりする。
▼コメント
■いがらしみきお(漫画家)
これほど純度の高い映画を目にするのはひさしぶりだ。
あらゆる形式を蹴とばして、川上さわ監督は自分の真っ黒い穴の中に旅立ち、そして見事に帰還した。
「地獄のSE」という血まみれのお土産を手に。
■金子由里奈(映画監督)
映画それ自体の豊かさを引き出す映画が一番すごいと思っていて、私はずっとそういうものが撮りたい。
「地獄のSE」はそんな作品だった。
■五所純子(作家)
世界のなにもかもが犯罪的にツノを出して、
世界のなにもかもが意味深長にヤリを出して、
アタマを抱えて、メダマを押されて、
思春期の、ナマモノが睥睨しあう、そんな映画。
ヒト、コマ、コトバ、真っ直ぐ斜めに進んでいく。
かってに生きて、ちょっと死ぬ。
ちょっと死んで、かってに生きる。