9月7日から、国立映画アーカイブで開催される「第46回ぴあフィルムフェスティバル2024」の招待作品部門として「生誕100年 増村保造新発見!~決断する女たち~」と題した特集上映が行われる。8月25日に生誕100年を迎えた増村保造監督の未配信作品8作品を含めた13作品を紹介する。著名人コメント、チラシビジュアル、上映作スチル、「盲獣」(https://www.youtube.com/watch?v=34OfrhjHNVI&rco=1)、「痴人の愛」(https://www.youtube.com/watch?v=FPLcIAzsm50)公開当時の予告編が披露された。
東京大学で法学と哲学を学び、イタリア留学でフェリーニ、ビスコンティに、そして大映(現・株式会社KADOKAWA)では溝口健二や市川崑に師事。映画界きってのインテリにして、異色の経歴も持つ増村保造。自己の欲望に忠実な登場人物たち、中でも強烈な個性の女性たちを意表を突く演出で描き、タランティーノら国内外の名だたる監督を興奮させたモダンな作風は、半世紀を経た今なお一向に色褪せない。本特集では、13作品中8作品が現在未配信の作品となり、スクリーンで鑑賞できる貴重なチャンスとなる。
チラシビジュアルは、「巨人と玩具」でキャンペーンガールを演じた野添ひとみが宇宙服のコスチュームで微笑むショットを筆頭に、「暖流」の左幸子、「痴人の愛」の安田(大楠)道代、「大地の子守歌」の原田美枝子、「女体」の浅丘ルリ子、「動脈列島」の梶芽衣子、そして本特集で4Kデジタル版修復が日本初上映される「盲獣」の緑魔子と、増村監督作品で強烈な個性を放つ女性たちが勢揃いした。緑魔子、原田美枝子、梶芽衣子の3人は、上映中のゲスト登壇も予定されている。「第46回ぴあフィルムフェスティバル2024」は、9月7日~21日に国立映画アーカイブで開催。※月曜休館
そして、増村監督を敬愛する、岨手由貴子監督、枝優花監督、田迎生成氏(モデル)、児玉美月氏(映画批評家)から寄せられたコメント全文は以下の通り。
▼コメント
■岨手由貴子 (映画監督)
増村作品に登場する個性的な女性たちは、根っからの異端者ではなく、ちゃんと社会の中で生きている。
ある意味、真っ直ぐに。
だから観客は共鳴し、魅了され、映画が終わるころには別の場所へと誘われている。
いまの世の中を生きる我々が、いかに意志薄弱であるか。
それを思い知らされ、打ちのめされるような映画体験は、大変に有意義で、気持ちが良い。
■枝優花 (映画監督・脚本・写真家)
「青空娘」は、今の時代で考えると内容はツッコミどころ満載で「おい!」という感じだが、とにかく映像が素晴らしい。物語においてキーとなる「青」。カラーフィルムでしか出せない色味が印象的で、澄みきるような爽やかさの青でもなく、青であるのに温かい。これが絶妙に物語のおかしさを説得力としてもっていっており、不思議な映画。
ヌーヴェルヴァーグの空気を纏う増村作品を、今観ると「新しい」と感じると思う。日本映画なのにヨーロッパのよう。でも映っているものは日本なので親しみもある。昔の映画だと思ってハードルをあげずに観ていただきたい。
■田迎生成(モデル)★日本大学芸術学部映画学科の卒業論文で増村保造論を執筆
“早すぎたモダニスト”増村保造。当時そう呼ばれたのは、作中でダイナミックなemotionが体現された女性たちが描かれているのが理由の1つ。「くちづけ」(1957)の野添ひとみや「妻は告白する」(1961)の若尾文子などが演じる女性は、自分の欲求に真っ直ぐで、彼女たちは大きく叫び、泣き、怒り、喜び、自分の感情を言葉や身体で主張し、決断していく。そんな彼女たちのエネルギーは、増村作品で印象的な食事のシーンで表現されているので是非そこにも注目してほしい。令和は“昭和のモダニスト増村保造”に追いついたのか!
■児玉美月(映画批評家)
「女体」のファム・ファタールたる浅丘ルリ子はその迸る身体を躍動させて、“男なら許されるのに女には許されない"熱情と奔放に満ちた人生を体現してみせる。
増村保造がスクリーンに命を吹き込んだそんな女たちと、わたしたちは今こそ出逢い直すべきなのだ。