第37回サンダンス映画祭でワールドプレミア上映されるやいなや、米バラエティが「サンダンスのベスト作品」に挙げるなど批評家たちから大絶賛で迎えられたサイコスリラー「映画検閲」。撮影時のインタビューや撮影の裏側に迫ったメイキングをふんだんに使用した特別動画と著名人からのコメントが公開された。
メガホンをとったのは本作で長編デビューを果たし、「いま見るべき10人の監督」(Variety)にも選ばれた気鋭の女性監督プラノ・ベイリー=ボンド。「REVENGE リベンジ」(17)、「セイント・モード 狂信」(19)、「TITANE チタン」(21)、「ハッチング 孵化」(22)、といった女性監督が手掛けるホラー映画が各国で大躍進を続ける中、世界が注目する新たな驚異の才能が出現した。
デビュー作とは思えないその卓越した演出手腕と独創的なストーリーテリングで、ダリオ・アルジェント、サム・ライミ、ルチオ・フルチらVHS全盛の時代に隆盛を極めた80年代ホラー映画へのリスペクトに溢れた、めくるめく恐怖の幻想を紡ぎ出し、、第71回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品、第54回シッチェス・カタロニア国際映画祭コンペティション部門出品など、世界中の名だたる映画祭で喝采を浴びた。
このほど公開された特別映像は、ホラー映画への強い愛情と、CGや特殊効果に頼り切らないどこか懐かしさを感じさせる、アナログな撮影の裏側など興味深い要素が満載。公開前の予習として楽しんでほしい。9月6日から新宿シネマカリテほか全国公開。
<あらすじ>
1980年代、サッチャー政権下のイギリス。暴力シーンや性描写を売りにした過激な映画<ビデオ・ナスティ>の事前検閲を行うイーニッドは、その容赦ない冷徹な審査ゆえに“リトル・ミス・パーフェクト”と呼ばれていた。イーニッドがいつも通り作品をチェックしていると、とあるホラー映画の出演者が、幼い頃に行方不明になった妹のニーナに似ていることに気付き、次第に虚構と現実の狭間へと引きずり込まれていく――。
▼コメント一覧
とても気に入った! 緻密で心をかき乱す、このジャンルをイギリス特有のセンスで甦らせた素晴らしいデビュー作だ。
ギレルモ・デル・トロ(映画監督)※SNSコメントより
「映画検閲」は映画に取り憑かれた者が、いかに現実と虚構のあわいに生きているかを寓話的に描く。 映画検閲官の主人公同様に、現代に生きるわたしたちもまた映像が本質的に孕む残虐性と暴力に直面している。
児玉美月(映画批評家)
眼球えぐりや絶叫シーンも含め、ビジュアルが美しく、独創的で、潜在意識にこびりつく映画。 見た後の余韻が凄まじく、後から考察したくなる系だ。 政治、メディア、道徳的問題などさまざまな要素が絡み合い、社会病理とも言える過剰なコンプラ問題にも触れている。 見応えある作品だ。
角由紀子(TOCANA)
映画の残酷描写を切り取る主人公。 それと同じように封じ込めようとした暗い腹の内が次第に溢れ出し、現実と虚構の境目を溶かしていく。 鮮烈な色使いが狂気を増幅させる。彼女は一体、映画以外の何を検閲していたのか。考えるだけでも恐ろしい
人間食べ食べカエル(人喰いツイッタラー)
行き過ぎた検閲は抑圧を産むだけなのではないか。 これはそんな一抹の不安を予感させる、多層的なサイコロジカルホラーだ。 虚実が倒錯するだけでなく、そのもっと奥に一番の恐怖が潜んでいる。 イーニッドが自身の抑圧と向き合う時、観る者は脳裏に焼きつくラストシーンに出会うことになるだろう。野水伊織(映画感想屋声優)
ホラームービーの中の美しい鮮血はまがい物で、悲鳴をあげる血まみれの美女も演技だと、一抹の孤独とともに我々は知っている。その冷徹さは本作の映画内現実にすら浸透している。そんな冷めた世界でいまだ虚実の妄想に囚われる者は、あまりに侘しいけれど、映画を呼び覚ます血にまみれた孤軍奮闘が輝かしいのだ。
真魚八重子(映画評論家)
残酷映画への愛から生まれたであろうこの作品は、残酷映画を「有害ではない」と擁護するどころか、 むしろその抗い難い危うい魅力を強調しているかのよう。 あのおぞましいラストを何度でも観たくなっている自分が怖い!
レイナス(「ホラー通信」記者)