韓国で社会現象を巻き起こした傑作「シュリ」のデジタルリマスター版が、9月13日より全国公開される。実は、同作に“韓国を代表する俳優”が端役で参加している。その俳優というのが、人気と実力を兼ね備えたファン・ジョンミンだ。本記事では、メガホンをとったカン・ジェギュ監督が当時を振り返る“貴重なコメント”を披露する。
「シュリ」は1999年2月13日に韓国で公開され、「タイタニック」を超える621万人を動員。翌年に日本でも公開され、当時の韓国映画としては空前の興行収入18億円を突破する大ヒットを記録した。ところが、本作の上映権が宙に浮く事態となり、劇場上映・配信などが出来なくなってしまい「映画の世界地図を書き換えた奇跡の1作」「韓流の始祖」など語り継がれながらも鑑賞することができない“幻の傑作”となっていた。
途切れることのない再上映の熱い声に応えようと、カン・ジェギュ監督自身が粘り強い権利交渉を重ね、その努力が実を結び、韓国での公開から25周年のアニバーサリー・イヤーにあわせて劇場再上映が叶うことになった。
舞台は1998年の韓国。韓国情報部員のユ・ジュンウォン(ハン・ソッキュ)とイ・ジャンギル(ソン・ガンホ)は、要人暗殺事件の捜査に当たっていた。犯人と目される北朝鮮の女性工作員を追跡する2人は、強力な破壊力を持つ液体爆弾を用いたテロの脅威を知る。そのターゲットは南北両首脳だった。
ファン・ジョンミンは、軍事クーデターの首謀者を演じた主演作「ソウルの春」(公開中)、元スパイの主夫を演じた「クロス・ミッション」も話題を呼んでいる人気俳優。これまでも「ただ悪より救いたまえ」「哭声 コクソン」「国際市場で逢いましょう」など数々の作品で強い印象を残してきたが、「シュリ」は3本目の長編映画出演作となった。データベースサイト「IMDb」にも役名が掲載されていない“端役”での出演となっており、初めてメインキャストに名を連ねた「ワイキキ・ブラザース」より前の作品となる。
カン・ジェギュ監督は、「シュリ」でのファン・ジョンミンについて「かなり時間も経っているので詳細には覚えていないのですが、オーディションのうえで出演していただきました。当時から演技にたけていらっしゃったのでしょう」と述懐。さらに、現在の活躍について、こう答えている。
「韓国で活動しながら存在感を示す優れた俳優は大勢いますが、最近『ソウルの春』を観て、自分だけの領域を持っている唯一無二の俳優だと思いました。私は映画人の一人として、さまざまな作品を通して活躍してくれるファン・ジョンミンさんに感謝しています。『シュリ』以降、機会がありませんでしたが、また機会があれば一緒に作品を撮りたいですね」
そして「ファン・ジョンミンを主演にした作品を作るとしたらどんな人物を演じてほしいか?」という問いかけに、驚きの回答が返って来た。
「私は個人的に『ジョーカー』が好きなのですが、もしファン・ジョンミンさんが“ジョーカー”を演じたらどう表現しただろうかとよく考えるんです。他の俳優に置き換えて考えてみることもありますが、やはりファン・ジョンミンさんのジョーカーを見てみたいですね。『ジョーカー』のような映画を撮る機会があれば、その劇中に投影されたファン・ジョンミンさんを見られる楽しみもあります」
今回の「シュリ」再上映については「映画に出演したハン・ソッキュさん、チェ・ミンシクさん、ソン・ガンホさん、キム・ユンジンさんの演技、そして、どこかに隠れているファン・ジョンミンさんを見つける楽しみもあります。俳優たちの25年前の姿を見るのも『シュリ』の楽しみのひとつではないでしょうか」とひとつの見方も提案した。
ファン・ジョンミンの出演シーンについては“韓国側の人物”“セリフあり”というヒントだけをお伝えしておこう。ぜひ映画館でその姿を“発見”してみてほしい。