三谷幸喜が「記憶にございません!」以来5年ぶりに、脚本・監督を手がけた9本目の長編映画「スオミの話をしよう」の初日舞台挨拶が9月13日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、三谷監督をはじめ、主演の長澤まさみ、共演する西島秀俊、松坂桃李、瀬戸康史、遠藤憲一、小林隆、坂東彌十郎、戸塚純貴、宮澤エマが出席した。
本作は行方不明となった大富豪の妻・スオミ(長澤)をめぐって、スオミを愛した一癖も二癖もある5人の男たち(西島、松坂、遠藤、小林、彌十郎)が、彼女について語り出すミステリーコメディ。誰が一番スオミを愛していたのか、誰が一番スオミに愛されていたのか。しかし、彼らが語るスオミの姿は、それぞれがまったく異なる女性だった――。
この日から全国372館で公開され、午後3時までの動員と土日の座席予約数を考慮すると興行収入30億円を狙える大ヒットスタートを切った。三谷監督は「今回脚本と監督と、BGMのピアニカを担当させていただきました」と挨拶。周囲が「本当に?」とざわつくと、「本当です」とピアニカも担ったことを明かしていた。
相手によって違う顔をみせる女性という難役を演じた長澤は「今できることはやれたのかなと思っていますが、終わった後も『スオミはもしかしたらこうだったかもしれない』『ああだったかもしれない』とスオミに対してまだまだ可能性を見出せる。すごく楽しい、面白い役を演じさせたもらった」と充実感もたっぷり。三谷監督は「本当にたくさんの引き出しを持っている方。まだ8つくらいは残っているんじゃないですか。僕が気づいた引き出しは全部開けました」と胸を張りながら、「もうちょっと奥にありそうな気がする。秘密の隠し扉がありそう」と今後にも期待を寄せた。
クライマックスで長澤の見せた集中力に、共演者陣も驚いたという。「あのシーンの日は、皆さんの足を引っ張らないように頑張らなくちゃと緊張していた」という長澤だが、「夫たちの目がやさしくて。見守るようにしてくださった」と夫役の俳優たちに感謝しきり。西島は「すごかった。目が離せなかった。綱渡を全速力で駆け抜けているような感じだった。引き込まれました」、松坂も「見入っちゃいました。次々と出てくる長澤さんの引き出しに、思わず心の奥底で手に汗を握りました」と絶賛する中、三谷監督は「長澤さんは今回の映画でNGを出していない」と秘話を披露していた。
改めて三谷監督は「僕は演劇出身の人間なので、演劇のような映画を作ってみたいとずっと思っていた。舞台はだいたい1か月の稽古をして、1か月本番をやる。本番の終わりぐらいには、俳優さんと役が一体化して、すごい境地まで行くんです。そういうお芝居を映画でも見てみたいと思った」と着手した思いを吐露。
続けて「僕は本当に俳優さんが好きで、俳優さんが輝いている映画が一番だと思っている。長澤さんもそうだし、5人の夫もほかのみんなもそう。本当にステキなお芝居をしていただいた。それが映画として残った。財産だなと思うし、最高傑作になったと思います」と役者たちに愛情をにじませながら感謝を述べた。
さらに「これはオリジナル作品。原作もないし、ベストセラーになったものを映画化したわけでもないし、ドラマのスピンオフでもない。皆さん多分おわかりだと思うんですが、アニメでもないんですよね、これ」と会場を笑わせながら、「オリジナルの映画が力を持つことが日本映画を底上げしていくんだと思う」と力強くコメント。長澤は「撮影をする前に1カ月近く、みんなで稽古を始めた。ちょっと他にはない映画かもしれません。稽古の中でみんなで作ってきた関係性がとてもいいものになって、その現場での温かさや朗らかさがこの映画にたくさん詰まって、ステキな映画に仕上がったのではないかなと思っています」と心を込め、大きな拍手を浴びていた。