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吉岡里帆、俳優としてブレないことは「その作品の1番のファンであること」【「トランスフォーマー ONE」インタビュー】

映画.com 2024年9月19日 12時0分

 「トランスフォーマー」シリーズ最新作となる3D CG「トランスフォーマー ONE」(9月20日公開)の日本語吹替版で、洋画吹替に初挑戦した俳優の吉岡里帆。英語版ではスカーレット・ヨハンソンが声を担当した女性戦士トランスフォーマー、エリータ-1を任されており、これまでのイメージとはがらりと異なる“力強い声”を披露している。

 「トランスフォーマーはじまりの物語」とされる本作では、オプティマスプライム(オライオンパックス)やメガトロン(D-16)が、変形能力を持つ前の姿が描かれている。

 固い友情で結ばれ、いつかヒーローになることを夢見ていた2人は、ある日謎のSOS通信を発見。SOSの座標を目指すべく、仲間のバンブルビー(B-127)、エリータ-1と共に、立ち入りが禁止されている地上世界に侵入する。そこでは、サイバトロン星全体を揺るがす陰謀と、敵の存在を知ることに。敵に立ち向かい惑星を救うために、アルファトライオンより変形能力を授かるが、オプティマスとメガトロンの正義感には、次第に隔たりが生まれ、親友という関係性にも変化が生じていく。

 これまで「空の青さを知る人よ」や「漁港の肉子ちゃん」にて声優を務めてきた吉岡だが、初めての洋画吹替にはどのような気持ちで臨んだのか。さらに、さまざまな作品に出演する上での決め事や、自身の不器用さなどについても語ってもらった。(取材・撮影・文/大野代樹)

――アクションやシリアスなシーンが多かったですが、抜け感がある場面もありました。そういった部分で印象に残っていることはありますか。

 バンブルビーにツッコミを入れるところが楽しくて、お気に入りです(笑)。今回、バンブルビーは本当によくしゃべるので、(エリータ-1は)それをものすごく鬱陶しく思っているんです。音響監督の岩浪(美和)さんからは「もっと笑いにしちゃっていいですよ」と指示をいただいたり、笑いの匙加減を話し合いました。会話の中に皮肉めいたアメリカンジョークを織り交ぜて、テンポよく話しているのは、聞いていて気持ちいいなと思いました。

――洋画の吹替に初挑戦されましたが、事前にどんな準備をしましたか?

 今回は、声優さんへの指導を本格的にされているボイトレの先生に指導をお願いしました。アメリカ版がスカーレット・ヨハンソンさんだったので、パワフルで響くかっこいい声を出せるようにしないと音があたらないということで、丹田(※編集部注 へその下の下腹部)を鍛え直しました。また、彼女は戦士なので、“戦う人の声”というのを考えながら臨みました。

――部下を引き連れている最初のシーンは、本当にパワフルな声でした。

 最初のシーンが1番難しくて……。何回やっても声がかすれてしまったので、1番テイク数を重ねました。自分の声帯的には、少し落ち着いているトーンの方が声が出やすくて。飛びながら話す、叫ぶのが、こんなに難しいんだと思いました。どうやっても裏返るんです。初めてアフレコした時は「どうしよう」と少し焦りました。

――演じられるうえで、音響監督の岩浪美和さんとはどのようなやり取りをされましたか。

 岩浪さんからの演出で大事だと思ったのは「声が甘くならない」というところです。アフレコしたものを1回聞かせていただいて、ちょっとでも声に甘さが入っていたら、全部やり直させていただきました。「強くてリーダー的な雰囲気が必ず出るように」という点は監督とも話していて「もっと強くいきましょう」「もっと低くいきましょう」と何度もやり取りしました。

――お気に入りのセリフも教えてください。

 実は私は結構メガトロンに感情移入していて……。悪に転じていく過程を思うと彼だけが悪いと思えないんです。今までメガトロン=完全悪と思われていた人にとっても、少し見方が変わる物語になっていると思います。私は子供の頃から戦隊モノのブラックをかっこいいと思うタイプなので(笑)。悪に染まってしまった理由が分かると、その背景のストーリーに胸が熱くなるんです。

――悪役にも感情移入するようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

 大人になるにつれて「素直に表現できないことってこの世にいっぱいあるな」ということに気づいて。年々、ヴィランの切なさがわかるようになっていきました。それまでは「ヒーロー最高!」という感じだったんですけど(笑)。

――演じられたエリータ-1は「核がブレないキャラクター」と言われていましたが、ご自身にもそういった部分はありますか。

 どんな作品に携わったとしても、自分がその作品の1番のファンであるということです。自分がその作品を最高に愛している、というところは、絶対にブレないようにしています。

――以前、吉岡さんはエリータ-1について、「不器用さも感じる」とコメントされていました。共感できる部分はありますか?

 周りから「そこは適当でいいじゃん」と言われる時に、そうできない自分がいます。全部しっかりやり切りたい気持ちが強すぎて、私は器用にはやれないんだなと思います。猪突猛進です(笑)。

――それは長所でもあると思います。

 ありがとうございます(笑)。個性として受け入れられる時もあるんですけど、現場によっては「そこにこだわっても時間が足りない」と思う時もあります。大人として割り切るのはなかなか難しいですね。

――いろいろな作品に出演されていますが、本作で初めてヒーローを演じられました。これまでの活動を振り返って、ヒーローだと思う方はいらっしゃいますか。

 ある舞台を観に行ったらチケット代を支払わないといけないのにお財布を忘れていることに気づいて……。その時、振り返ったら偶然、江口のりこさんがいらっしゃって、目があったら「なんや、金か」っておっしゃったんです(笑)。何も言ってないのに私の表情で察してくれて「ええで、貸してあげるわ」って。「うわ〜かっこいい!」と思って、完全にヒーローでした。

――最後に、今回の洋画吹替も初挑戦であったように、お仕事や私生活面で初挑戦したいことを教えてください。

 最近は、時間があったらプライベートで海外に行っているんですけど、去年舞台でアルゼンチンタンゴに触れる機会があって。情熱的でかっこよくて、感情を解き放つダンスにとても惹かれたので、実際にアルゼンチンで本場のタンゴを見てみたいです。

――最近はメキシコに行かれてましたね。

 そうなんです。すごく楽しかったです! 光の強さや人の陽気さ、普段触れないような価値観、文化や景色に心が解放される感覚がありました。仕事的にもいい気分転換になって、大事なことだと思いました。

 「トランスフォーマー ONE」は、9月20日から全国公開。

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