2020年のコロナ禍真っ最中の東京を、青柳拓監督自らウーバー配達員として働きながら撮影したドキュメンタリー映画「東京自転車節」。このほどアメリカでの劇場公開、全米放送が決定し、アメリカ公開版フライヤービジュアルも披露された。
20年3月。山梨県で代行運転の仕事が遂になくなってしまった。コロナ禍で働き口がない中で、注目されてきたのが自転車配達員の仕事。いつでも気軽に始められる自転車配達員に飛びついた青柳監督は、家族が止めるのも聞かずに新型コロナウイルス感染者数が増えていた東京に向かう。緊急事態宣言下に入っていた東京で、青柳監督は自転車配達員として働きながら、自らと東京の今を撮影し始めた。働くということとは? “あたらしい日常”を生きることとは? 全編スマートフォンとGoProで撮影された“路上労働ドキュメンタリー”となっている。
21年の劇場公開後、英題「Tokyo Uber Blues」として、シェフィールド国際ドキュメンタリー映画祭、ヘルシンキ国際映画祭Docpoint、ムンバイ国際ドキュメンタリー映画祭など、海外の映画祭で評価されてきた。アメリカでの公開日は、9月23日。ロサンゼルスにある「LAEMMLE Town Center 5」を始め、西海岸を中心に順次公開されていく。
また、公共放送PBSが展開するドキュメンタリーシリーズ「POV」のシーズン37に選出され、10月21日より全米で放送される。日本のドキュメンタリー映画ではあまり例がない快挙だ。
コメントは、以下の通り。
【クリス・ホワイト(POVエグゼクティブ・プロデューサー)】
『Tokyo Uber Blues』は、急速に変化する経済がもたらす課題をユーモアと厳粛さの両方で捉えた、現代にふさわしい映画です。パンデミックの真っ只中に青柳監督が、ギグワークの労働力として参入したことは、私たちの新しいシステムが必ずしも労働者のために機能しているわけではないことをはっきりと浮き彫りにしています。苦闘の人生を皮肉たっぷりに描いたこの作品は、ドキュメンタリー界の新鋭による爽快で厳粛なデビュー作です。
【青柳拓(本作監督)】
コロナ禍で生活や労働環境が変わる中で、ギグワークが私と社会のニーズを繋げてくれました。この種の仕事には魅力がありますが、ビデオゲームをしているようなものでその勢いを止めることができません。すぐに利益を上げることが義務でしたが、私の体は歯車になっていることを実感しました。良いか悪いかは別として、私は身体的で観て楽しい映画を作ろうとしました。この映画が今、アメリカの観客に届けられていることをとても嬉しく思います。