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【世界の映画館めぐり】スリランカ、国際空港から一番近いローカル映画館でスリランカ映画を楽しもう

映画.com 2024年9月21日 18時0分

 映画.comスタッフが訪れた日本&世界各地の映画館や上映施設を紹介する「世界の映画館めぐり」。今回は、インド洋の真珠と呼ばれる美しい国、スリランカ。空の玄関バンダラナイケ国際空港ほど近くにある小さな映画館、Ruoo Cinema Katunayakeに行ってきました。

 海外からの多くの旅行客が、飛行機を降りて最初にスリランカの地を踏むのは、同国最大の都市コロンボではなくこのカトゥナーヤカという郊外都市でしょう。ちなみにスリランカの首都は、スリジャヤワルダナプラコッテです。地理の時間に世界地図を見ながら、何度も唱えて覚えて悦に入った中学生時代を思い出しました。あの暗記がこんな風に役に立ってうれしいです。

 スリランカには古代遺跡や自然豊かな土地など魅力的な観光地がたくさんありますが、今回はトランジットで短期間での訪問。日程的にあちこち訪れるのは難しかったので滞在はコロンボ周辺のみに絞ろうと情報収集をし、ネットで地図を眺めていたところ、なんと空港のほど近くに映画館のマークを発見しました。バンダラナイケ国際空港は朝10時頃着、予約したコロンボの宿のチェックインは14時なので、右も左もわからない初めての国での時間つぶしに映画館はピッタリです。

 熱帯に位置するスリランカは常夏の国です。飛行機から降りて熱気を感じましたが、今年の夏は日本も相当暑かったので、午前中は東京より涼しく感じるほど。空港を出るやいなや、トゥクトゥクなどと呼ばれる、南アジアや東南アジア諸国でよく見かけるオート三輪車の運転手さんが声をかけてきます。

 日本でいえば成田空港のように、大抵の旅行者は、空港から大都市を目指すものですから、私が目当ての映画館Ruoo Cinemaまで行ってもらえるか尋ねるも、英語の発音に問題があったのかわかってもらえず、コロンボまで乗せていくというのでお断りし、徒歩で向かいました。Googleマップをたよりに10~15分くらいで到着。観光客ではなく主に地元の方々が利用する、バス乗り場の目の前でした。東京で例えると、渋谷駅からBunkamuraに行くより近い感じです。

 スリランカは人口の多くが仏教徒ということで、街を歩いているとあちこちに仏像やブッダ、蓮の花を描いた絵画が見られ、特定の信仰は持っていない筆者もなんだか先月のお盆の気分がよみがえりました。心の中で南無~と唱えてみます。

 地図のガイダンス通りに歩いていると、小さな商店が立ち並ぶ、ローカルなムードの一角に映画の看板が出現。スリランカではシンハラ語という文字が使われますが、インドが地理・文化的に近いので、街中の表示では主にインド南部で用いられるタミル語も併記されています。インド映画も人気のようで、一体どんな映画に出合えるのか、エネルギー満ち溢れる数々の看板に期待が高まります。

 劇場前で上映開始時間の表示を見つけられず、とりあえずスクリーンのあるビルの2階を上ってみました。すでに映画は始まっていたようでしたが、若い男性スタッフがひとりいたので、今から見られるか尋ねたところ、突然現れた日本人客に驚いたのか「スリランカムービーですよ。OK?」と後ろの扉を少し開けて、スクリーンを覗かせてくれました。初めてのスリランカでスリランカの映画を見られるなんて、願ったりかなったりです。席は空いているのでどこでもよいと言われ、550スリランカルピー(約260円)を支払い、席につきました。

 「Sihina Nelum Mal」という作品で、筆者は裕福そうな夫婦のケンカのシーンから鑑賞。シンハラ語で英語字幕もないため、セリフはわかりませんが、夫は何かの事件に巻き込まれ、妻は子どもを持ちたくても何らかの事情でかなわないことがわかりました。夫婦と彼らを取り巻く人々のさまざまなドラマが繰り広げられます。言葉がわからない分、俳優たちの演技のほか、男性たちがカフェで飲んでいる赤いドリンクはなんだろう…、夫婦の住まいは都会のマンションだけれどもインテリアに日本人形や仏像があるのがなんだか親しみを感じるな…と細部に目が行きます。インド映画のようなダンスシーンはないものの、抒情的でドラマチックな歌が効果的に何度か使われ、登場人物の心情を表しているようでした。

 インド映画ではおなじみのインターミッションが挟まれ、場内が一度明るくなりました。この休憩時にスナックやドリンクを買いに行けるようですが、わたしは館内観察。日本のミニシアターのような感じで(後で調べたところ170席だそう)、ラブストーリーだったからか、客席にはカップル客が数組おり、劇場後方にVIPと書かれた二人掛けソファ席もありました。そして映画は後編に。いつか日本で上映されることがあるかもしれませんので、ネタバレは書きませんが、映画はハッピーエンド。いささか古風な設定ではありましたが、愛し合う男女が結婚し、困難を乗り越えて家族を作る幸せをストレートに描いた心温まるドラマでした。

 そして、ここからが面白い話。この映画のタイトルなど知りたく、自己紹介も兼ねて上映後に入口の青年スタッフに尋ねたところ、「僕のおばが日本に住んでるんですよ!」と速攻でビデオ通話をかけてくれ、千葉に住んでいるというご婦人と日本語で会話することに。テクノロジーの進歩のおかげですね。「お話できてうれしいです、千葉も長い海岸があって、スリランカのようですよね…」とそんなたわいもない会話で終わってしまいましたが、小さな映画館での小さな国際交流を楽しみました。

 東京国際映画祭などをはじめ、日本でもスリランカ映画は時々紹介されているようですが、筆者にとっては今回が初めてのスリランカ映画で、何よりスリランカの映画館で見られたことが何よりうれしかったです。また、コロンボを発つ飛行機の中では、なんと新潟県で撮られた日本との合作映画も発見し、ますますスリランカの映画事情に興味が沸きました。

 というわけで、スリランカ旅行でローカルな映画館を体験してみたいという映画ファンのみなさん、空港からすぐのRuoo Cinema Katunayake、とってもおすすめです。時間によっては、最新のインド映画が上映されているようです。次回はスリランカの大都会コロンボ、とってもラグジュアリーなシネコンでのインド映画鑑賞体験記をお届けします。

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