「夏目アラタの結婚」(公開中)で黒島結菜が演じた品川ピエロこと品川真珠に注目が集まっている。原作者の乃木坂太郎氏がキャラクターの誕生秘話を明かした。
乃木坂氏の人気漫画を実写化した本作は、児童相談所職員の主人公・夏目アラタが、連続殺人犯の死刑囚・品川真珠にプロポーズすることから始まる“獄中サスペンス”を描く。「SPEC」シリーズ、「十二人の死にたい子どもたち」などの堤幸彦監督がメガホンをとり、連続殺人事件の遺族から相談を受け、死刑囚に会いに行く元ヤンキーの児童相談所職員・夏目アラタを柳楽優弥、“品川ピエロ”の異名をもつ死刑囚の品川真珠を黒島がそれぞれ演じた。
品川真珠は、3人の社会的に成功した男性を殺した連続殺人犯。逮捕時、太ったピエロのような風貌をしており、笑った時に見せるガタガタの前歯から“品川ピエロ”という異名で日本中から恐れられていた。
太ったピエロ姿の品川真珠は、登場シーンは短いものの、暗い部屋の中で血まみれになりながら死体を解体するという衝撃的な演出によって強烈なインパクトを与えた。ピエロ姿に変貌するメイキング映像が公開されると、「別の女優さんがやってると思ってた!!」「ピエロ役も黒島結菜だったんだ」など驚きの声があがった。
一方で、物語が進むにつれて死刑囚・品川真珠の孤独な背景が徐々に明かされていく。「真珠に対して感情移入できるような演出が『ジョーカー』みたい」といったコメントのように、“和製ジョーカー”と表現する人も多い。コメディアンを夢見る心優しき青年が悪のカリスマに変貌を遂げていくジョーカーと、裁判を経てその生い立ちが明かされていく死刑囚・真珠の姿が重なる。さらに、「IT イット “それ”が見えたら、終わり。」「IT イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。」のペニー・ワイズも殺人ピエロの代表格だ。
死刑囚と公務員の獄中結婚という衝撃的なエピソードの中で、なぜあえてピエロ姿の犯人を描こうとしたのか。原作者の乃木坂氏は「僕にとっての怖いピエロの記憶、それは江戸川乱歩が書いた探偵小説『地獄の道化師』でした。殺人鬼の哀しい動機、正体は小学生だった自分に強い印象を残し、雑誌の企画でイラストを描かせてもらった事もありました」と振り返る。そして、「『夏目アラタの結婚』を始める際に道化師、殺人ピエロを出そうと考えたのは、自分に取り憑いた何かを払い落としたかったのかもしれません」とその誕生理由を明かした。
太ったピエロという衝撃的な姿から変貌を遂げた死刑囚・真珠の予測不可能な言動は、アラタだけでなく観客をも翻弄していく。真珠を演じた黒島は、「真珠は何を考えているかも分からないし、何が本当で何が嘘かもわからない、色々掴みどころがないキャラクターだと思います。ですが、ふとした時に本音の表情があったりするんです。嘘の嘘は本当というような、それがお客さんに、どこまで、どういう風に伝わるのかなというのが楽しみです!」と語っている。
「夏目アラタの結婚」は全国公開中。