国民的人気シリーズとして、日本実写映画興行収入記録を樹立した織田裕二主演「踊る大捜査線」シリーズの劇場版第1作「踊る大捜査線 THE MOVIE」が本日8月28日午後9時から、フジテレビ系で放送されます。今回の放送は、「踊るプロジェクト」の最新映画2部作「室井慎次 敗れざる者」(10月11日公開)、「室井慎次 生き続ける者」(11月15日公開)の公開を記念したもの。映画.comでは、あらすじとキャストまとめをご紹介するとともに、シリーズの生みの親と言っても過言ではない亀山千広氏が今から12年前、シリーズ全てを総括するなかで明かしてくれた誕生秘話をお届けします。
【あらすじ】
湾岸署管轄の境界線を流れる川で、腹部に熊のぬいぐるみを詰められた水死体が発見された。時を同じくして、署内では刑事課のデスクから領収書や小銭入れが盗まれる窃盗事件が発生。さらに、管轄内に住む警視庁副総監が身代金目的で誘拐され湾岸署に捜査本部が設置されるが、本部は極秘捜査を進めるばかりで所轄の刑事たちに協力を求めようとしない。そんな彼らに怒りを募らせながらも、水死体事件の捜査に奔走する青島たち。やがて、副総監の身代金受け渡しに失敗した捜査本部が、ついに公開捜査に踏み切ることになる。
【キャスト】
青島俊作:織田裕二
室井慎次:柳葉敏郎
恩田すみれ:深津絵里
柏木雪乃:水野美紀
袴田健吾:小野武彦
魚住二郎:佐戸井けん太
真下正義:ユースケ・サンタマリア
秋山副署長:斉藤暁
新城賢太郎:筧利夫
神田署長:北村総一朗
島津:浜田晃
中西係長:小林すすむ
森下:遠山俊也
緒方:甲本雅裕
山下圭子:星野有香
渡辺葉子:星川なぎね
吉川妙子:児玉多恵子
日向真奈美:小泉今日子
和久平八郎:いかりや長介
湾岸署警務課長:山崎一
湾岸署会計課長:温水洋一
湾岸署刑事課暴力犯係係長:前原実
川村:真柴幸平
赤羽:佐藤正昭
黒田:山口年美
大林:隆大介
吉田敏明:神山繁
警視総監:川辺久造
警察庁警備局局長:大和田伸也
池神:津嘉山正種
SIT隊員:津田寛治
SIT隊員:久世星佳
警察庁長官:渥美国泰
警察庁次長:原田清人
警察庁長官官房長:和田周
警察庁官房総務審議官:篠原大作
警視庁刑事部長:河西健司
本庁捜査員1:中根徹
本庁捜査員2:偉藤康次
本庁捜査員3:渥美博
内閣情報調査室長:加地健太郎
公安部長:大杉漣
公安部捜査員1:藤原習作
公安部捜査員2:大石継太
警察庁警備局警備課員:野仲功
所轄捜査員:朝倉杉男
監視班捜査員:山崎岳大
プロファイラー1:山地健仁
プロファイラー2:はらみつお
イベントコンパニオン1:丸久美子
イベントコンパニオン2:片石貴子
イベントコンパニオン3:須之内美帆子
イベントコンパニオン4:大工原しのぶ
イベントコンパニオン5:黒岩麻美
カフェテラスのウエイトレス:木内晶子
若い看護婦:木村多江
吉田副総監の妻:深沢みさお
坂下始:北山雅康
坂下始の母親:大塚良重
河原崎宗太:正名僕蔵
窃盗容疑者:平賀雅臣
葉山誠二:一条康
中倉繁:小堀直人
【「踊る」誕生秘話】
●当初の構想はドンパチもの!?
木村拓哉と山口智子が共演した「ロングバケーション」をプロデュースした亀山千広氏。平均視聴率29.6%という空前の大ヒットを飾りますが、年間3クールというハードな日々を過ごしてきたため、次回の担当作品を1997年1月クール、織田裕二主演ということだけを決め、休養に入ります。
驚きなのは、「当初はアクションを駆使したドンパチものでいくつもりだった」といいます。それでも、「踊る」の骨格をなす亀山氏、脚本の君塚良一、監督の本広克行の3人は、それが運命であるかのごとく距離を縮めていきます。
「織田君と話をしたら、刑事ものはOKだと。監督を誰にしようかとなったときに本広克行の名前が浮上したんです。織田君が別のドラマでサードディレクターをしていた本広と非常にシンパシーを感じていたらしいんですよね」。
そして、脚本は亀山氏が以前から興味をもっていた君塚に白羽の矢が立ちます。理由は明快で、「刑事ものって5~6人のメインキャラクターが登場するものじゃないですか。だから、キャラクターをしっかりと書き分けられる方じゃなければならないと思っていたんです」と説明してくれました。
●刑事ものだから事件は起こる。いわば記号
亀山氏は当時、急に勢いが出てきたアメリカのテレビドラマに注目していたそうです。なかでも、「L.A.ロー 七人の弁護士」や「NYPDブルー」といったモジュラー型の作品を好んでいたといいます。
「登場人物が何人もいて、1話完結でありながら片付かない。全員の人生を抱えながらずっと続いていく。新しいなあと思って、これを参考にしようということになったんです」。
それでも、3人の思惑が最初から一致していたわけではなかったようです。
「君塚さん、本広と会って、お互いに好きな刑事ものを挙げましょうということになったんだけど、全員ばらばら。君塚さんは『太陽にほえろ』、本広は今では信じられないけど『砂の器』とか言ったりして(笑)。で、僕は『夜の大捜査線』。絶対に合わないなと思いながらも、犯人が主役のドラマは嫌だということは見解が一致したんです。
刑事ものって事件が起こらなければ始まらないじゃないですか。そうじゃなくて、刑事ものなんだから事件は起こる。いわば記号だと。刑事に目を向ければ、事件に振り回されてデートができない、子どもとの約束が守れないという事もままあるでしょう。そっち側をドラマに出来ないだろうかと。それで取材してみたら、とにかく面白かったので、『踊る大捜査線』では事件はとにかく起こるもの。何で事件が起こったか、その背景は……とかはなし。犯人は捕まえて、そこから先は裁判所が決めること。基本線はこれでいこうということになったんです」
●ニフティのドラマフォーラムがパンク寸前
制作陣が試行錯誤を繰り返して作り上げた「踊る大捜査線」ですが、映画化への道のりは決して平坦なものではありませんでした。最終回の視聴率は23.1%を記録したものの、20%を超えたのはこの1回限り。そういった影響もあり、映画はおろかビデオの発売すら予定になかったそうです。
ところが、追い風は意外なところから吹いてきました。
「当時、今ほど普及していなかったパソコンに飛びついていた人たちが、まだヤフーがなかったころだから、ニフティのドラマフォーラムでおおいに話題にしてくれていた。当時、『踊る』と『新世紀エヴァンゲリヲン』の放送時はサーバーがパンクするって言われていたんですよ。よく行く飲み屋の兄ちゃんが流行りものが好きでね、『踊る、こんなことになっていますよ』とプリントアウトしたものを見せてくれたんです」
●レンタルビデオ店9000店舗に対し、市場に出回ったのは3000セット
その熱烈な書き込みは、亀山氏の想像をはるかに上回るものでした。
「まあ、コアファンなわけですよ。『エヴァ』と同じ現象だと思いましたね。『エヴァ』だってあれだけヒットしたじゃないですか。これはひょっとしたら想像以上のものになるんじゃないですか、と言い続けていたら、とりあえずビデオを出してみようということになったんですよ」。
しかし、レンタルビデオ店が当時9000店舗前後あったのにもかかわらず、市場に出回ったのはわずか3000セット……。
「行き渡っていないわけですよ。となると、例のドラマフォーラムが盛り上がるわけです。『どこの店にあった』だとか『僕がダビングしてあげる』だとか……。こりゃ著作権違反しているじゃないか! だったら行き渡らせるようにということで増産されたんです」
●社内からも「これを映画にしなければ何を映画にするんだ」
そして、さらなる追い風は社内から吹いてきました。
「別のセクションに『踊る』を好きなやつがいて、これを映画にしなければ何を映画にするんだ、という熱い企画をあげていたんです。上から『映画化する気はあるか?』と聞かれたんで、やってみたいですと。ただ、映画だけだとリスキーなんで、その前にスペシャルを2本作らせてくださいと頼みました」。
こういった経緯を経て誕生するのが、「踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル」(97年12月放送/視聴率25.4%)と「踊る大捜査線 秋の犯罪撲滅スペシャル」(98年10月放送/視聴率25.9%)。「僕は2本と映画がセットだと思っていたので、死ぬ気で作っていましたね。テレビ的でありながら、映画の要素も入れられるなあと思ったので、これは映画を作ってもやっていけるんじゃないかと感じました」。亀山氏の当時の上司は、スペシャル2本の結果が良ければ映画化に向けて動き出すと伝えたつもりだったそうですがが、亀山氏が解釈の違いに気がつくのは、ずっと後の話です。