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スティーブ・マックイーンが10万人以上虐殺の恐怖を35ミリ、4時間11分で蘇らせる「占領都市」12月27日公開

映画.com 2024年10月2日 16時0分

「それでも夜は明ける」のスティーブ・マックイーン監督、A24製作の映画「占領都市」(原題:Occupied City)が12月27日から公開される。このほど予告編と日本版ポスタービジュアル、場面写真10点が披露された。

 オランダの首都として栄えたヨーロッパ屈指の大都市アムステルダム。運河が流れる「水の都」としても知られるこの街には、第二次世界大戦中の1940年5月から5年間、ナチス・ドイツの占領下におかれた恐怖の記憶がある。人々は人権や言論の自由を奪われ、ユダヤ人を中心に多くの犠牲者が出た。強制収容所へ移送された人は10万7000人。統計では、その内の実に10万2000人が虐殺されたとされている。マックイーン監督は「二度とこうした歴史を繰り返さないために」と映画化を構想。歴史家でマックイーン監督の妻のビアンカ・スティグターが2019年に著した「Atlas of an Occupied City (Amsterdam 1940-1945)」を原作とし、傑作「SHOAH ショア」をも彷彿させる4時間11分の大作ドキュメンタリーとして完成させた。

 アムステルダムを第二の故郷として暮らすマックイーンが目指したのは、単なる知識や情報としてではなく、場所をして語らしめ、当時の記憶を鮮烈に蘇らせるような映画だ。アーカイブ映像の使用やインタビューによる回想はあえて使わず、35ミリフィルムで130カ所にも及ぶ「現場」を正確に捉えることで、計り知れぬ恐怖の日々を体感させる。子どもたちの声が響くにぎやかな公園、美しいレンガ造りの家など、美しい風景も、忌まわしい虐殺の記憶を持っている。これは、約80年前の過去と現在との距離を取り払う挑戦であり、スケール感と野心に満ちた記念碑的な映画となっている。

 予告編は、有名メディアの絶賛コメントとともに、その一部を垣間見ることができるもの。また、ポール・バーホーベンやヤン・デ・ボンら名だたる監督とも仕事をしてきた撮影監督レナート・ヒレッジによる撮影は、「ドキュメンタリーの一般的な撮り方は自分に合わない」と話すマックイーンが「素晴らしい」と絶賛。音楽は同じくA24製作の「aftersun/アフターサン」でも劇伴を担当したオリバー・コーツが担当。王立映画アカデミー、ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラ出身でチェリストでもあるコーツは、クラシカルな素養と電子音楽を融合した幻惑的で浮遊感のある音像を作り上げた。

 本作は、カンヌ国際映画祭スペシャル・スクリーニング部門で上映されたのち、英国インディペンデント映画賞で長編ドキュメンタリー賞やクリティックス・チョイス・ドキュメンタリー・アワードで監督賞・歴史ドキュメンタリー賞・撮影賞にノミネートされた。日本でも今年3月にTBSドキュメンタリー映画祭の海外招待作品としてプレミア上映され、TBS DOCSが買い付けた初めての洋画作品(11月22日公開の「人体の構造について」)に続く2本目として、12月27日一般公開される(長尺作品のため、上映中にはインターミッションを1回挟んで上映される予定)。

 「占領都市」は、12月27日からヒューマントラストシネマ渋谷&有楽町ほか全国公開。

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