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心に傷を負った元自衛官に迫る、隠蔽された過去の闇 実際の報道に着想を得た衝撃作「火の華」12月20日公開

映画.com 2024年10月3日 17時0分

 実際の報道に着想を得た “平和国家”の暗部に斬り込む衝撃作「火の華」が12月20日公開される。本ビジュアル、本予告、場面写真が披露された。主題歌は、大貫妙子&坂本龍一の「Flower」。

 本作は、2016年に実際に報道された「自衛隊日報問題」を題材にし、元自衛官の壮絶な経験とその後の宿命を克明に描いた完全オリジナルストーリー。日本映画ではほぼ扱われることのなかったPTSDの深刻さを見据えながら、<戦う>ということや<平和>の在り方、そして人間の本質までを問いかける。

 PKO(国連平和維持活動)のため南スーダンに派遣された自衛官の島田東介。ある日、彼の所属する部隊が現地傭兵との銃撃戦に巻き込まれる。同期で親友の古川は凶弾に倒れ、島田はやむなく少年兵を射殺。この前代未聞の“戦闘”は、政府によって隠蔽されてしまう。それから2年後の新潟。悪夢に苛まれる島田は、危険な武器ビジネスに加わりながら、花火工場の仕事に就く。親方の藤井与⼀や仲間の職人たちに支えられ、心に負った傷を少しずつ癒していく島田。しかし、花火師の道に一筋の光を見出した矢先、島田に過去の闇が迫る……。

 監督は、長編デビュー作「JOINT」(2021年)で新藤兼人賞銀賞に輝いた小島央大。長編2作目となる本作では、企画・脚本・編集・音楽までを手がけた。主人公の島田には、「JOINT」でも主演を務めた山本一賢が元自衛官の葛藤と再起を等身大で演じる。さらに二人の盟友キム・チャンバが「JOINT」に続いてプロデューサー・出演者として加わり、才気溢れるチームが再集結した。柳ゆり菜、松角洋平、ダンカン、伊武雅刀ら実力派俳優たちが脇を固める。

 日本伝統の花火をモチーフにしており、登場する打ち上げ花火は、長岡花火ほか世界クラスで活躍する花火師の監修の元、全て実写で撮影している。また、元自衛官やジャーナリストに数々の取材を敢行し、徹底したリサーチの基、自衛隊や武器の世界も忠実に再現。細部までリアリティを追求した撮影と演出が、花火師と自衛隊の世界を重厚に彩る。

 公開された本予告では、南スーダンで凄惨な戦闘に巻き込まれた主人公の島田が、自衛官を辞職した今もなお悪夢に苛まれ、花火に救いを求めていく姿が映し出される。前代未聞の事件を上官から「命令に従え」と隠蔽を強要されてしまう島田。2年後、新潟。自衛官を辞した島田は、花火師となっていた。しかし、挑んだ花火大会の現場で、銃撃戦がフラッシュバックされPTSDを発症してしまう。さらには悪夢に苛まれる日々の中で、「火薬」を使った危険な武器ビジネスに介入していく。最後は、銃を手に取る島田が映し出される。

 大貫妙子&坂本龍一による主題歌「Flower」が収録されたアルバム「UTAU」が発売されたのは2010年の11月。リリースから14年の時を経て、映画の主題歌に起用されたことについて大貫は、「私から解き放たれた私の種子は、自由に飛んで行ける。どこまでも!」 とのコメントを寄せ、さらに、本作の題材にもなった「自衛隊日報問題」を先陣で取材を続けてきたジャーナリストの布施祐仁は、本作は「単なる「フィクション」ではない」と明言。「この国のあり様を深く考える契機となることを願ってやまない」と切なる思いを綴っている。

 テアトル新宿の年内最後の興行となる本作。1年を締め括る12月公開作品として、多田祥太郎支配人は「来たる12月に上映する事が出来、大変喜ばしく感じております」と述べ、本作について「リアルな手触りは『ケイコ 目を澄ませて』『市子』と同様、映画の醍醐味に溢れています」と称賛の言葉を贈っている。

 映画「火の華」は、2024年12月13日新潟県先行公開、20日テアトル新宿、ユーロスペースほか全国公開。

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