フランシス・フォード・コッポラ監督が長年温めてきた野心作「メガロポリス」が、北米で興行的に厳しいスタートを切った。約1億4000万ドル(約210億円)もの巨額を投じて制作されたが、初週末の興行収入はわずか400万ドル(約6億円)程度にとどまったと、米ニューヨーク・タイムズなどが報じている。
「メガロポリス」は、アダム・ドライバー、ジャンカルロ・エスポジート、ナタリー・エマニュエルらが出演する近未来のニューヨークを舞台にしたSF史劇。コッポラ監督は本作の制作のために、所有するワイナリー事業の一部を売却して資金を調達。約1億2000万ドルの制作費に加え、マーケティングと配給に約2000万ドルを投じた。
しかし、観客の反応は冷ややかだった。北米の約2000館で公開された本作は、映画の観客満足度を測定する米国の市場調査会社CinemaScoreの出口調査でD+という低評価を受けた。
映画業界の専門家デイビッド・A・グロスは、「好むと好まざるとにかかわらず、映画館はもはやこの種のエンターテインメントを求める観客の行き先ではない」とコメント。近年、オリジナル作品は劇場公開されずにストリーミングサービスに直行するケースが増えており、映画館では続編やリメイク作品が主流となっている。
配給を担当したライオンズゲートの幹部、アダム・フォゲルソンは、「コッポラ監督は我々の創造的ファミリーの大切な一員だ」とし、「真の芸術作品として、時間をかけて観客に評価されるだろう」と語っている。
コッポラ監督だけでなく、他の著名監督も同様の苦境に立たされている。今年の夏には、ケビン・コスナー監督の西部劇「ホライズン、アメリカン・サーガ(原題)」も興行的に失敗。続編の劇場公開計画は中止されている。
「ゴッドファーザー」や「地獄の黙示録」など、1970年代に数々の傑作を生み出したコッポラ監督の最新作が興行的に苦戦したことは、映画産業の構造的変化を反映している可能性がある。大規模予算のオリジナル映画の劇場公開が苦戦する一方で、続編やフランチャイズ作品、あるいはストリーミングサービスでの配信が主流となりつつある現状は、映画製作や配給のあり方に新たな課題を投げかけている。