「ぼくのエリ 200歳の少女」「ボーダー 二つの世界」で知られるスウェーデンの鬼才ヨン・アイビデ・リンドクビストによる原作小説を、「わたしは最悪。」のレナーテ・レインスベ主演で映画化した「Handling the Undead(英題)」が、「アンデッド 愛しき者の不在」の邦題で、2025年1月17日に公開されることがわかった。
本作は、3つの家族に焦点を当てた、日本の怪談的要素のあるストーリーだが、同時にメランコリックかつポエティックな、悲しみと喪失と希望についての物語。極力抑えられた登場人物の感情やセリフ、35ミリフィルムで撮影された構図、ゆったりとしたカメラの動きなどで、美しさと不気味さを醸し出す(※劇場はDCP上映)。
物語の舞台は、現代のオスロ。息子を亡くしたばかりのアナとその父マーラーは悲しみに暮れていた。ある日、墓地で微かな音を聞いたマーラーは墓を掘り起こし、埋められていた孫の身体を家に連れて帰る。鬱状態だったアナは生気を取り戻し、人目につかない山荘に親子で隠れ住むことに。しかし帰ってきた最愛の息子は、瞬きや呼吸はするものの、全く言葉を発しない。やがて、招かれざる訪問者が山荘に現れる。そして同じ頃、別の家族のもとでも、悲劇と歓喜が訪れていた。
MVや短編映画を手がけてきた1989年生まれの新鋭テア・ビスタンダルが、長編監督デビューを果たし、ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭、ヨーテボリ映画祭、リビエラ国際映画祭などで監督賞を受賞。「マルホランド・ドライブ」に衝撃を受けて映画業界に入ったというビスタンダル監督は、本作のインスパイア作品として、「惑星ソラリス」「ミツバチのささやき」「CURE」「エコール」「SHAME シェイム」などを挙げている。
05年に発表した同名小説の作者であるリンドクビストが、ビスタンダル監督と共同で脚本を担当。フィクショナルな存在を、マイノリティのメタファーとして描いてきた気鋭の作家が、本作ではアンデッド(生ける屍)を登場させ、愛の所在を問いかける。「わたしは最悪。」で第74回カンヌ国際映画祭の主演女優賞に輝いたレインスベがアナを演じるほか、アンデルシュ・ダニエルセン・リー(「わたしは最悪。」)、ビョルン・スンクェスト(「シンデレラ 3つの願い」)、ベンテ・ボシュン(「Sensommer(原題)」)、バハール・パルス(「幸せなひとりぼっち」)らが共演した。
本作は、第40回サンダンス映画祭で、サウンドデザイナーのピーター・レイバーンが特別審査員賞を受賞し、ビスタンダル監督が審査員特別賞にノミネート。ノルウェーのアカデミー賞と呼ばれるノルウェー国際映画祭のアマンダ賞では、6部門にノミネートされ、4冠に輝いた。独立系映画スタジオ・NEONがイギリスと北米の配給権を獲得し、24年5月に公開された。
「アンデッド 愛しき者の不在」は25年1月17日から、東京のヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーほかで公開。