第16回京都映画企画市の企画コンテストが10月5日にハートピア京都で開催され、審査の結果、栗本慎介監督、島村隆脚本の企画「引かれ者の小唄」が優秀映画企画に決定した。
一次書類審査を通過したファイナリストである安藤恵哉監督が「落武者敗走記」、川又藍監督が「化身」、池田暁監督が「然るのち、堕ちる」、齋藤栄美監督と井上季子プロデューサーが「玉響道中膝栗毛」、そして栗本監督と島村氏(脚本)がそれぞれプレゼンを行い、犬童一心氏(映画監督)、須藤泰司氏(東映映画企画部ヘッドプロデューサー)、和田隆氏(映画評論家)が審査を行った。
優秀映画企画に選ばれた「引かれ者の小唄」は、訳ありの引かれ者(裸馬に乗せられ刑場へ引かれていく重罪人)と彼を護送する役人の奇妙な交流を描く新しい“バディ時代劇”。立場も性格も正反対の男たちが、目的地までの道中で互いに矜持をぶつけ合い、次第に奇妙な関係に築いていくという心揺さぶるヒューマンドラマだ。
栗本監督は「魅力的な企画が並ぶ中で、まさか受賞できると思っていなかったので、非常に驚いています。すぐにパイロット版製作が始まるので気が抜けないですが、ぜひ面白い作品にして、長編化につなげられるよう、京都の撮影所のお力を借りて頑張っていきたいと思います」と述べ、島村氏は「審査員に今回いただいたご指摘を活かして、キャスティングなど企画内容もさらに再考して、良い企画にしたいと思います」とした。
犬童監督は「この企画の題材、従来の時代劇では誰も作っていなかった“市中引き回し”のアイデアがとても良かった。まだ詰めが甘い部分はあり、他のファイナリストの企画も個性があり面白かったが、長編化を見据えて成立させる可能性を感じて選出した」と総評を述べた。
また当日は、第15回優秀映画企画「サバイバル忍者」のパイロット版がお披露目され、馬杉雅喜監督と脚本の三井玲衣氏が舞台挨拶を行った。作品は謎に包まれた偉人、国を正そうとする若き聖徳太子と、全忍者の祖であり、山奥で1人生きた純粋無垢の大伴細人(サビト)が繰り広げるアクションサバイバル活劇。
「京都映画企画市」は、時代劇の拠点である京都の優位性を活かし、京都から若手クリエイターを世に送り出すことを目的とした、時代劇・歴史劇ジャンルの映画企画コンテスト。優秀映画企画には、長編劇場公開につなげるために350万円相当のパイロット版(短編)映像制作の権利が付与され、京都での撮影、京都太秦の撮影所の協力とアドバイスにより制作を行う。特定非営利活動法人映像産業振興機構(略称:VIPO)と京都府が主催。
なお、第8回(2016年度)の優秀映画企画としてパイロット映像を制作した蔦哲一朗監督「黒の牛」が国際共同製作を経て、初長編化を果たした。今年度の「第37回東京国際映画祭“アジアの未来”部門」で上映されることが決定している。