映画「徒花 ADABANA」が10月18日、全国60館で封切られ、東京・テアトル新宿では主演を務める井浦新、水原希子、永瀬正敏、甲斐さやか監督が舞台挨拶に立った。井浦は、水原や永瀬との共演を喜ぶと共に、甲斐監督作のメッセージ性について恩師である故若松孝二監督の「系譜を感じる」と語った。
本作は、長編デビュー作「赤い雪 Red Snow」で国内外から高く評価された甲斐監督が、20年以上の歳月をかけて構想・脚本執筆した日仏合作映画。最新技術を用いた延命治療が国家により推進されるようになった近未来を舞台に、裕福な家庭に育ったものの重い病により静養している新次(井浦)が、心理療法士のまほろ(水原)に、上流階級の人間が病に冒された際に身代わりとして提供される、全く同じ見た目の“もう1人の自分”に会わせてほしいと懇願する……。
井浦は新次と“それ”という二役を演じたことについて「ふたりが生まれ育ってどんなものを食べながら、どんな人たちに見守られて育ってきたのかを勝手に想像して役を膨らませていきました」とアプローチ方法を語ると、テクニカルに演じ分けるというよりは、バックヤードを体に染み込ませていったという。そんな井浦の芝居に甲斐監督は「とにかく信頼できる方々にお願いしたので、本番ではびっくりするぐらい想像を超えるお芝居をしてくださり、自然と笑ったり泣いたりしてしまいました」と撮影を振り返る。
井浦は水原や永瀬との共演に触れ、「希子さんはお芝居だけではなく、さまざまな分野で自己表現を妥協なくしている。そんな方とお芝居で対峙したら、自分でも想像できない空気を作り出せるのかなと思った。永瀬さんは20代のころから、よきタイミングでお芝居をさせていただき、一緒のシーンがあるたびに衝撃を受けていました。絶対永瀬さんからいただいたものを、ものにしようとやってきました」と絶大なる信頼を持って作品に臨んだことを明かす。
そんな信頼し合える仲間たちと作り上げた作品。井浦は「昨日も恩師である若松孝二監督の特集上映が、このテアトル新宿であったので、この舞台に永瀬さんと共に立ちました」と報告。「そのとき作風も人柄も若松監督と甲斐監督は違いますし、お弟子さんでも助監督でもないのですが、作品の持つ刃の鋭さなど、勝手に(若松監督の)系譜にいる感じがありました」と若松監督と甲斐監督の共通するものについて述べ「これからも甲斐監督ならではの刃を世の中に突き付けていくんだろうなと感じました」と語っていた。