第25回ニューポートビーチ映画祭に登壇したニコラス・ケイジが、人工知能(AI)技術の進化が俳優の表現を脅かす可能性があると警告したことを、米Deadlineが報じている。ケイジは特に「デジタルレプリカ(EBDR)」と呼ばれる技術に対する懸念を表明している。
EBDRは俳優の演技を基に作成されるAI技術で、撮影後でも俳優の顔、声、セリフ、動き、さらに演技そのものを変更可能にする。ケイジは若手俳優たちに向けて、「スタジオはこの技術を使って、撮影後でさえもあなたのすべてを変えることができる」と警告し、EBDRの使用を許可する契約への署名には慎重になるよう呼びかけた。
アカデミー賞受賞俳優として知られるケイジは、「映画での演技は、非常に手作りで有機的な、一から作り上げるプロセスだ」と強調。「それは心から、想像力から、思考や細部、そして考えや準備から生まれるものだ」と、俳優の創造性の重要性を説いた。
これは今回が初めての警告ではない。昨年7月のインタビューでも、ケイジはAIへの強い懸念を表明していた。「AIには本当に恐れている」と語り、「アーティストの真実はどこに行き着くのだろうか? それは置き換えられてしまうのか? 変質させられてしまうのか?」と問いかけていた。
ケイジの発言は、昨年の米俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキでも大きな議題となったAI技術の使用問題を、改めて浮き彫りにした。俳優の権利と創造性を守ろうとするアーティスト側と、新技術の活用を推進するスタジオ側との対立構図が、ケイジの警告によってより鮮明になった形だ。この問題は、ハリウッドにおけるAI技術の倫理的使用と、芸術表現の本質に関する議論をさらに加速させそうだ。