第37回東京国際映画祭のコンペティション部門出品作「わが友アンドレ」が10月28日、丸の内TOEIで上映された。俳優であり、今作で監督デビューしたドン・ズージェン、俳優のリウ・ハオラン、イン・タオによるQ&Aが実施された。
父の葬儀のため中国東北部の故郷の街に向かったリーは、中学卒業以来会っていなかった風変わりな友人アンドレが同じ飛行機に乗っているのに気づく。だが、アンドレはリーのことを知らないと言い張る。この奇妙な再会をきっかけに、リーの少年時代の記憶がよみがえる。「羊飼いと風船」(19)などペマ・ツェテン作品に携わった撮影監督リュー・ソンイェの幻想的なカメラワークで、学校生活や家庭の中で傷つきながら成長する子どもたちの繊細な心理、少年ふたりの友情がエモーショナルに描かれる。
これまで多くの作品で俳優として活躍しているドン・ズージェンは、「映画監督になることが私の長年の夢でした。電影学院(中国の映画学校)に入ったのもそういった理由です」と、監督志望であったことを明かす。デビュー作となった今作は、俳優として出演していた別の映画の製作者から原作小説を薦められ、自身で脚本を執筆した。「子どもが大人になる過程には苦痛が満ちていますが、とにかく撮ろうと思った」と、その物語に惹かれたという。
主演のリウ・ハオランは、「唐人街探偵」シリーズなどで、日本でも知られる人気俳優だ。ドン・ズージェンとは実際に友人同士ということで、「親友なので映画に出てほしいと言われて戸惑いがありましたが、友情、親子の情、なくなったものを探し出す――そういった人間の関係を描く素晴らしい映画になると思い、出演しました」と経緯を説明し、「私たちは古くからの友人ですが、撮影に入ってからは、はっきりと監督と役者の関係になりました」と互いにプロフェッショナルに徹した。
そして、「私たちは年齢も、学校で受けた教育の内容も近く、彼が撮った映像を見ても近しさがあります。ベテランの監督の映像を見ると世代差を感じることがありますが、この映画のふたりは我々と同じ若者で、一緒に並行して歩いている感じ。それが今回ドン・ズージェンとの仕事で一番強く感じたことです」と等身大の作品に仕上がったことを強調する。
主人公の母親を演じたイン・タオは「ドン・ズージェンさんと役者同士として仕事をしたことはありませんでしたが、彼が出演している作品をたくさん観ており、素晴らしい俳優だと思っていました。ですから、彼が作るこの作品に全面的に信頼を置きました。私が演じた母親は、神秘的なキャラクターだと考え、とにかく一生懸命演じました」と振り返った。
ドン・ズージェンは、初監督作が東京国際映画祭のコンペティション部門選出という栄誉に「コンペ入選は光栄に思いますが、日本に来る前は緊張していました。今、こうやって参加できてうれしく思います。皆さんと交流をしたかったのです」と述懐。本作に込めたテーマを問われると、「映画はお説教をするものではありませんが、この映画で問題提起をしたかったのです。子ども時代に感じる苦いこと、幸せなこと、悲しみ、愛に対価を支払うこと――そういったことを全部脚本に書きこみました。このような問題について皆さんと探求をしたかったのです」と語った。
第37回東京国際映画祭は、11月6日まで開催。