第37回東京国際映画祭・アジアの未来部門に出品されたホラー映画「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」のQ&Aが10月30日、丸の内ピカデリーで開催。近藤亮太監督と共に、本作に出演している俳優の平井亜門がサプライズで登壇した。
本作は、「第2回日本ホラー映画大賞」で大賞を受賞した近藤監督による同名短編ホラーを、杉田雷麟を主演に迎えた長編映画として撮りあげたもの。弟の失踪にまつわる1本のビデオテープに閉じ込められた粗く不穏な映像に、真の恐怖を体感できる“新次元Jホラー”だ。近藤監督は本作で商業映画デビューを果たし、総合プロデューサーをJホラーの巨匠、清水崇が務めた。
近藤監督は、自身の作品をセルフリメイクした経緯について「短編のほうは、撮ってる時点で長編にするつもりじゃなかったです。でも、ふと見た新聞の記事で、骨壺の不法投棄をしたというものがありまして。回収業者が違法に捨てたものだったらしいのですが、そんなことがあったら、神隠しが起こる山が生まれても不思議ではないなと感じました。その時、この映画を長編にする重要なアイデアが見つかったと思いました」と語った。
Q&Aでは、本作を見てとても怖かったという声が多数上がった。また、民宿の息子との会話を長回しで撮ったシーンでは、「人物の語りによる不気味さが生み出され、素晴らしかった」という意見も。
近藤監督は長回しで撮った理由について「まず、撮影の期間がわりとタイトで、なるべく効率よく撮る必要があったのと、今回参加してくれた俳優たちは若いけど、力がある方々が集まってくれたので、すべてのシーンをなるべく始まりから終わりまでやってもらったほうが、お芝居を引き出すうえでも、撮影の効率からいっても、いいであろうと考えました。それによって、全体のムードを演出できるのではないかと思い、なるべくワンカットで撮ることにしました」と意図を明かした。
ここで、本作の上映を会場で見ていた平井が飛び入り参加。平井はワンカットで撮るという手法について「監督は長回しでも寄りでも、頭からケツまでばーっと撮っていたという記憶があります。完成品を見ても、監督は長尺で撮ってるなという印象がありました。また、その民宿の息子役の吉田ヤギさんのシーンは僕も大好きですし、僕も長回しのシーンが多いなと驚きました」と述懐した。
また、実力のある若手俳優陣のキャスティングについて、近藤監督は「一番は自分が見てきた作品で優れていた役者たちです。大事にしていたのは佇まいで、画面に映った時の説得力、この人はこうだと伝わることが、ホラー映画にとっては大事。この人であれば、リアルに存在してくれるだろうと思ってオファーしましたが、すべて叶い、幸運だったと思います」と俳優陣を称えた。
続いて、撮影で気をつけたことは?と質問された近藤監督は「とにかく現場で自分が本当に怖いと思っていることを撮るということでした。おそらく怖かったと思いますが、どうでしたか?」と、平井に尋ねる。
平井は「そうですね。はい。すごく怖かったです。僕自身、がっつりホラー映画に出演するのが初めてだったので、こういうふうに、幽霊の残像みたいなものを撮るんだという発見の毎日でした」としみじみ語った。
第37回東京国際映画祭は、11月6日まで開催。