第37回東京国際映画祭のガラ・セレクションに選出された時代劇「雪の花 ともに在りて」が11月2日、東京・有楽町の丸の内ピカデリーで公式上映され、脚本も手がけた小泉堯史監督、出演する松坂桃李と芳根京子が舞台挨拶に立った。
「雨あがる」「博士の愛した数式」「峠 最後のサムライ」などで人間の美しい在り方を描いてきた名匠・小泉監督が、吉村昭の小説「雪の花」を映画化。江戸時代末期の福井藩を舞台に、数年ごとに大流行する疫病から、人々を救おうと奔走した実在の町医者の姿を描く。
松坂が演じるのは、痘瘡(天然痘)の有効な予防法として、天然痘の膿をあえて体内に植え込むという種痘の普及を目指す主人公の笠原良策。疫病と戦った実在の人物を演じ「すごく緊張しました」と振り返り、「資料を読みながら、ゆっくりゆっくり役を入れていくのは、難しいことでもあったが、監督をはじめ、いろんな人の手を借りて、良策という役を全うできた」と自身の挑戦に手応えを示した。
良策の妻・千穂を演じる芳根は、「居眠り磐音」でも松坂と共演しており、「どちらも時代劇で、和装の松坂さんを見慣れているので、いまのほうが不思議」と笑顔。「居眠り磐音」では松坂演じる主人公の許嫁という役どころで、「約束はしたんですけど、(結婚)できず……。今回、無事に結婚できて、最後まで支えることができて幸せです」と語ると、松坂も「こちらこそです!」と幸せそうに視線を送った。
小泉組に初めて参加した松坂は「全編フィルム撮影なんですよね。撮り直しがきかない緊張感が現場に漂っている。その中でのお芝居は、味わったことのない高揚感もありました」と、日本映画の伝統を受け継ぐ現場に尊敬の念。また、小泉監督については「自然を味方にするというか、天候が操れるのかなと思った」と語った。
一方の芳根は、「峠 最後のサムライ」に続き、小泉監督と2度目のタッグ。「1度目は緊張で、記憶が薄くなってしまうほど。今回はしっかり記憶に残すぞという意識でした」と振り返った。
「毎回、これで最後かなと思いながら作品を撮っている」と語る小泉監督は、「歴史上の人物を演じるのは難しいこと。ここにいるお二人は、想像力を大事にしながら、登場人物たちを立ち上げてくれる。現場でそれを最初に見られるのが楽しみだった」と松坂と芳根を絶賛。日本の時代劇が再び脚光を浴びる現状に関しては、「僕の中で、時代劇というくくりはない。歴史というものは、やはりいまの時代につながっていないとね」と話していた。
第37回東京国際映画祭は、11月6日まで開催。「雪の花 ともに在りて」は、2025年1月24日に全国公開される。