山田風太郎氏の小説「八犬伝 上・下」(角川文庫刊)を、役所広司主演で映画化した「八犬伝」(公開中)のVFXメイキング映像が、このほど披露された。渡邊圭祐&水上恒司が、劇中屈指のバトル「芳流閣シーン」の裏側を語っている。
本作は、里見家にかけられた呪いを解くため、運命に引き寄せられる若き8人の剣士たちの戦いをダイナミックに描く“虚”パートと、180話に及ぶ物語を悩み苦しみながら28年もの歳月をかけて書き上げた作家・滝沢馬琴の創作の真髄、そこで生まれた奇跡の実話を描いた“実”パートがシンクロするというエンタテインメント大作となっている。
里見家の呪いを解くため運命に引き寄せられた8人の剣士たちの戦いをダイナミックに活写する“虚”パートと、その作者である江戸時代の作家・滝沢馬琴(役所)の創作の真髄に迫る“実”パートを交錯させて描く。監督は「ピンポン」「鋼の錬金術師」の曽利文彦。
SNSでは「“虚”のアクションが虚構らしく派手派手で良かった」「VFX技術。ほんとすごかった!」「VFX駆使の大屋根での殺陣と瓦崩シーンは映画館で観て正解!」とダイナミックな映像に多くの反響が寄せられている。本作にはVFXスーパーバイザーとして、1989年にマットアーティストとしてジョージ・ルーカスが設立したILMに入社し、2017年まで「スター・ウォーズ」シリーズ、「ジュラシック・パーク」「アバター」など数多くのハリウッド超大作に携わった上杉裕世が参加。主に八犬士たちの戦いを描いた“虚”パートでその凄さを堪能することができるが、数あるシーンの中でも特に注目されているのが、原作でも有名な「芳流閣」での戦いのシーンだ。
八つの珠に引き寄せられ出会いを果たす八犬士たち。冒険のさなか、後に彼らのリーダーとなる犬塚信乃(渡邊)は、信乃を捕えようとする十手使いの豪快な男・犬飼現八(水上)と対峙し、芳流閣の瓦屋根の上で壮絶な戦いを展開することになる。このシーンは、渡邉と水上以外は全てVFXで制作され、2人のアクションシーンの撮影は、富士山が見えるロケーションに十畳程のグリーンバックと屋根に見立てた30度の傾斜のセットで行われた。CGは屋根の瓦の形状の細部までこだわっており、平場で撮影したアクション映像の合成を考えると“平瓦にしたほうがいいのでは?”と曽利監督は考えたそうだが、最終的に丸瓦にする難題にチャレンジしている。
映像では、実際に撮影に挑んだ渡邊と水上が撮影秘話を明かしている。芳流閣のシーンは、「原作ファンの方からも再現してくれてよかったと一番言われることが多い気がします」と語る渡邊。グリーンバックや高所での撮影も多く、「物理的に過酷な状況でのアクションシーンの撮影で、そういう意味での大変さも心に残った」と振り返る。
水上は、主演の役所にも「やっぱりVFXはいいな、“虚”のほうはいいな、カッコいいな」と絶賛されたことを明かし、現八として劇中で初めてセリフを言うシーンでもあったことから、撮影現場の環境は気にならないほど集中していたという。
苦労の末完成したシーンを観た渡邊は「当時撮影していた情景と画が一致しない。観客の皆さんと同じリアクションで観ていました」、水上も「どれだけの時間と工程を踏んでこれを僕らが今目の当たりにできているのか、わからないぐらい」と驚嘆の声を上げている。