巨匠リドリー・スコットが手掛け、アカデミー賞5部門を受賞した名作の続編「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」が第37回東京国際映画祭の「Centerpiece/センターピース作品」として特別招待され、アジア最速となるプレミア上映が決定。これを記念し11月4日、都内で来日記者会見が行われ、主演のポール・メスカル、共演するデンゼル・ワシントン、フレッド・ヘッキンジャー、コニー・ニールセンが出席した。
「aftersun アフターサン」(2022)の演技が高く評価され、第95回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたメスカルは、主人公であるルシアス役を熱演する。ローマ帝国軍の侵攻によって愛する妻を殺され、奴隷として売られるグラディエーター=剣闘士。前作でラッセル・クロウが演じたマキシマスの息子という役どころだ。「ルシアスはアンチヒーローの要素が強く、復讐を果たす過程でヒロイックな一面を見せていく。その両面を演じられるのは、役者冥利に尽きる」と満足げに語った。
撮影中はアドレナリンが湧きだす瞬間が多くあったと振り返り「進化するアクション、夢のようなセット、何より監督がリドリーだからね。多くの人々に愛される作品の続編に出演していて、興奮しない方がおかしいよ」と確かな達成感を示すと、隣に座るワシントンが「きみは(撮影当時)26歳だったからね!」と、いたずらっぽい笑顔を見せた。
そのワシントンは、約11年ぶりの来日を果たし「僕も日本に戻って来るのを、心待ちにしていたよ」と上機嫌だ。ワシントンが演じるマクリヌスは、皇帝顔負けの貫禄で馬車に鎮座し、ルシアスの心に燃え盛る“怒り”に目をつける謎の男。スコット監督とは、クロウと共演した「アメリカン・ギャングスター」(07)以来の再タッグで、「今回は楽だったよ。観覧席から、ポールの奮闘を見ているだけだからね(笑)」と余裕を見せた。
もちろん、スコット監督への信頼は絶大。「何台ものカメラで同時に撮影するから、どこから撮られて、どう編集されるかもわからないから、その分、巨匠に身を委ねて、自由に演じるんだ」と話していた。
ヘッキンジャーは、飢えるローマ市民など意に介さず、権威を誇示し続ける双子皇帝のひとり、カラカラ帝を怪演。きらびやかな衣装に身を包み、「とてもギラギラしていて、底なしの欲望と腐敗によって、ローマの都市が崩壊しつつあることを表現している。まさにピッタリな衣装だよ」と振り返った。
来日ゲストでは唯一、前作「グラディエーター」にも出演しているニールセン。皇帝コモドゥスの姉にして、マキシマスのかつての恋人、そしてルシアスの母という役どころで、歴史の生き証人として存在感を放っている。「テクノロジーの進化もあって、監督が描きたいローマ帝国の崩壊がありのまま、スクリーンに映し出されている」と語り、ルシアスがマキシマスの息子である設定については「私も想像できなかった」と驚きの表情だった。
記者会見には、第37回東京国際映画祭のコンペティション部門で審査員を務めている俳優の橋本愛が登場し、4人に花束のプレゼント。「心から敬愛する皆様にこうしてお会いできていることが、現実とは思えず、震えています」と緊張した面持ちだった。
第37回東京国際映画祭は、11月6日まで開催。「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」は11月15日から全国公開される。
【前作「グラディエーター」とは?】
古代ローマを舞台にした前作「グラディエーター」は、苛烈を極める皇帝の後継者争いの陰謀に巻き込まれ、奴隷の座へと落とされた元大将軍マキシマスが復讐を誓い、剣闘士(グラディエーター)としてコロセウムで極限の闘いに挑む姿を描いた。主演のラッセル・クロウ、暴君を演じたホアキン・フェニックス、リチャード・ハリスら名優たちによる演技合戦、大スケールで描かれる情熱的なバトルシーンなどが話題を呼び、2001年・第73回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞を含む5部門受賞を果たした。
アカデミー賞作品賞受賞作の続編が同じ監督によって作られるのは、フランシス・フォード・コッポラ監督による「ゴッドファーザー PART II」(1974)以来となり、本作がアカデミー賞作品賞を受賞すれば約50年・半世紀ぶりのシリーズ2作連続受賞となる。