ドナルド・トランプ氏の大統領再選によりハリウッドの企業再編が加速する可能性があるとの分析記事を米ハリウッド・レポーターが報じている。
トランプ氏の勝利が確実となった11月7日、ハリウッド最大手のひとり、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)のデビッド・ザスラフ最高経営責任者(CEO)が注目すべき発言を行った。「新政権は業界再編を加速させる機会をもたらすだろう」
この発言の背景には、ストリーミング時代の到来による旧来型メディアの危機がある。米国の地上波テレビ離れは加速しており、ディズニーやWBDといった老舗スタジオは、Netflixに代表されるストリーミング企業との競争に苦戦を強いられている。
ソニー・ピクチャーズのトニー・ビンチケラCEOも、「今後2年で、ハリウッドは混乱の時代を迎える。企業の合併、破産、売却など、様々な出来事が起きるだろう」と、大手企業以外は生き残りが難しいとの見方を示している。
バイデン政権は、企業の寡占化を防ぐため、合併・買収に対して厳格な規制を敷いてきた。連邦取引委員会(FTC)と司法省は2022年度、過去20年で最多となる50件の企業結合規制を実施。この姿勢が、業界再編の足かせになっていたと、米メディアは指摘している。
一方、トランプ氏は企業規模の拡大に比較的寛容な姿勢を示している。同氏は10月、グーグルの分割を求める司法省の主張に対し、「企業を分割せずとも、より公平な競争環境を整備できる」と述べている。
業界関係者の間では、YouTubeを運営するグーグルなど大手テクノロジー企業による、ハリウッドスタジオの買収観測も浮上している。「YouTubeは既に主要な動画配信プラットフォームのひとつ。コンテンツ制作の強化を目指し、スタジオ買収に動く可能性がある」と、米法律事務所シェパード・マリンのデビッド・サンズ弁護士は指摘する。
また、地上波放送局の統合再編も活発化する可能性がある。米テレビ局大手ネクスターのペリー・スーク会長は、「われわれの真の競争相手は、スマートフォンからテレビまで、あらゆる画面にアクセスできる巨大テクノロジー企業だ。古い規制を改革し、公平な競争環境を整備する時が来ている」と訴えている。ただし、業界再編には懸念の声も上がっている。米脚本家組合(WGA)は、企業の寡占化が労働者の待遇悪化につながると警告。
さらに、トランプ氏が公約に掲げる関税引き上げがインフレを招き、金利の引き下げペースが鈍化する可能性も。こうした経済環境の変化が、企業再編の行方を左右する可能性もあると、米ハリウッド・レポーターは報じている。