フランスの名匠アルノー・デプレシャンがメガホンをとり、映画史に功績を残した50本以上の名作が登場する「Spectateurs!(原題)」が、「映画を愛する君へ」の邦題で、2025年1月31日から公開されることがわかった。
本作は、「キングス&クイーン」(2004)、「クリスマス・ストーリー」(08)などで知られるデプレシャン監督が、19世紀末に誕生してから現在に至るまでの映画の魅力と魔法を語り尽くす、映画への深い愛と映画館への賛美に満ち溢れた“シネマエッセイ”だ。
本編は、ドラマとドキュメンタリーを融合したハイブリッドな構成で展開。ドラマのシーンは、デプレシャン監督の「そして僕は恋をする」(1996)、「あの頃エッフェル塔の下で」(15)でマチュー・アマルリックが演じた主人公ポール・デュダリスに、デプレシャン監督自身を投影した自伝的映画になっている。初めて映画館を訪れた幼少期、映画部で上映会を企画した学生時代、評論家から映画監督への転身を決意した成人期を、映画史とともに描き出す。第77回カンヌ国際映画祭で特別上映され、最優秀ドキュメンタリー賞にあたるゴールデン・アイ賞にノミネートされた。
アマルリックが、本人役で出演。ポールの祖母役を「ママと娼婦」(1973)で知られるフランソワーズ・ルブラン、14歳のポール役を「落下の解剖学」(2023)の視覚障がいのある息子役で注目を浴びたミロ・マシャド・グラネールが担う。
劇中には、50本以上の名作映画が登場。リュミエール兄弟による映画の発明から、アベル・ガンスの「ナポレオン」(1927)、フランク・キャプラの「或る夜の出来事」(34)、アルフレッド・ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」(59)、黒澤明の「乱」(85)、クロード・ランズマンの「SHOAHショア」(85)、ジェームズ・キャメロンの「ターミネーター2」(91)、ロジャー・ミッシェルの「ノッティングヒルの恋人」(99)など、世界中のさまざまなジャンルの映画が、洪水のようにスクリーンを駆けめぐる。
そのほかフランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、イングマール・ベルイマンらの映画も登場。デプレシャン監督が尊敬するアメリカの哲学者スタンリー・カベルやフランスの批評家アンドレ・バザンの言葉も借りながら、「映画とは何か」に迫る。
さらに、フィクションのシーンには、一般の観客が映画体験エピソードを語るインタビューが挟まれる。「本作の主題は“私たち”映画の観客」とデプレシャン監督が語るように、観客の視点で映画愛が描かれている。大阪のシネ・ヌーヴォ、東京のアンスティチュ・フランセなど、日本の映画館の登場も見逃せない。映画は私たちの人生にどれほどの影響をもたらすのか——デプレシャン監督による映画と映画館へのラブレターのような作品に仕上がっている。
あわせて披露された日本版ティザーポスターは、祖母に連れられて初めて映画館を訪れた6歳のポールの姿を、ノスタルジックにとらえたもの。スクリーンを背に、映写機から広がる光を見つめるその瞳は、映画が今後の彼の人生に与える多大なる影響を予感させる。左右には劇中に登場する名作映画のタイトルが溢れんばかりに配置され、映画好きの胸が踊ること間違いなしのビジュアルだ。場面写真には、初めて映画館を訪れるポールの後ろ姿や、14歳で映写機と向き合う姿、さらにはアマルリックのショットも確認できる。
「映画を愛する君へ」は、25年1月31日から東京・新宿シネマカリテほか全国で順次公開。