俳優・のんが11月20日、都内で行われた主演作「私にふさわしいホテル」の完成披露上映会に出席した。物語の舞台は、権威としがらみだらけの文学界。自分のデビューを邪魔した大御所作家に仕返ししようと奔走する不遇な新人作家を演じたのんは、「いままで演じてきた、一番性格が悪い役だと思いますが、それがすごく気持ち良かったです」と快演を振り返り、「ずっと性格が悪い役をやりたくて、やっと来たかと。性格悪い役で天下をとっていきます!」と宣言していた。
舞台挨拶には、のんをはじめ、共演する田中圭、滝藤賢一、髙石あかり、原作者の柚木麻子、堤幸彦監督が登壇した。新人賞を受賞したものの大物作家・東十条宗典(滝藤)から酷評され、小説を発表する場すら奪われた新人作家・加代子(のん)。憧れの「山の上ホテル」に宿泊した彼女は、憎き東十条が上階に泊まっていることを知り、大学時代の先輩でもある担当編集者・遠藤(田中)の手引きによって“仕返し”を決行。まんまと成功するが、これを機に両者の因縁バトルが幕を開ける。
自身の“仕返し”体験を問われると、のんは「ド派手な仕返しはできませんが、声をファルセットにして、言いたいことを言います。相手に伝わらず、誰も傷つかないので、おすすめです」とユニークな逸話で、会場を和ませていた。
田中は初共演となった、のんについて「普段はおしとやかで、おっとりしたイメージですが、加代子になった瞬間のパワーがすごくて。そのパワー、普段はどこにしまっているのかなと思った。堤監督の無茶ぶりも、ふわっと乗りこなしていた」と驚きの表情。一方、のんと共演経験のある滝藤は、「『あまちゃん』の頃から変わらない、生まれたばかりの赤ちゃんのような、汚れなき目が、いまも変わらないんだと驚きました」と、別の理由で驚がくしていた。
25年秋放送のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」のヒロインに選ばれた髙石は、東十条の娘・美和子役を務めた。豪華なキャストと共演し「皆さん、いつかご一緒したいと思っていた方々ばかり。夢みたいで、贅沢な時間だった」と振り返った。
本作は、加代子が憧れるホテルとして、24年2月に惜しまれながら全面休館を迎えた「山の上ホテル」で最後に撮影された貴重な作品でもある。先日、明治大学が「山の上ホテル」を取得したと報じられたばかりで、原作者の柚木氏は「買ってくれたのがソニーじゃなくて(笑)、大学で良かった。やはり、山の上ホテルはハッピーエンドが似合うし、映画にとっても良いニュース。幸先がいい」と満面の笑みを浮かべた。
完成した映画は「本当に大好きな作品」と絶賛。のんが演じる加代子像について、「国民的人気者が演じるのだから、ちょっといい子になるんだろうなとか、いろんな改変があるんだろうと……。このキャストなら我慢しようと思っていたが、実際には本当に悪いやつで! ありがとうございました」と感謝を伝えると、堤監督は「最高の褒め言葉です」と感激しきり。「柚木さんの中には、パート2の構想もあるみたいなので、ぜひ映画を広めてほしい」とアピールしていた。
「私にふさわしいホテル」は、12月27日より全国ロードショー。