劇場アニメ「銀河鉄道999」「幻魔大戦」「メトロポリス」などで知られるりんたろう監督の最新作「山中貞雄に捧げる漫画映画『鼠小僧次郎吉』」の本編特別映像が公開された。
本作は、日本映画の黎明期にサイレントからトーキー初期にかけて活躍し、28歳で夭折した天才監督山中貞雄が生前に遺した「鼠小僧次郎吉 江戸の巻」をサイレントアニメーション化したもの。
「AKIRA」の大友克洋がキャラクターデザインを担当し、2023年3月開催の第1回新潟国際アニメーション映画祭でワールドプレミア上映され、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭、リュミエール映画祭での上映を経て、今年9月にアメリカ・ロサンゼルスで行われた日本映画祭で最優秀アニメーション賞を受賞している。
このほど公開された本編特別映像は、冒頭プロデューサーや撮影所所長らお偉方の「いいシャシン頼むね~」の声を背負いながら山中貞雄があくびをしながらどっしりとディレクターズチェアに座り込み、カットのスタートをかける場面から始まる。マイペースなそれまでの様子と違い、鋭い眼光で見つめる山中監督。ただよう緊張感。「ヨーイ……ホイ」という独特な掛け声とともにカチンコがなると、寺の鐘とともに音楽が走り出す。美しく水面に光る月と舞い散る紅葉、そして、駆け出すネズミと謎の人影――音楽と映像が巧みに折り重なって、“何かが起こる”予感に満ちた映像となっている。
りんたろう監督は、山中が残した脚本をそのまま映像化するのではなく、「山中貞雄へのオマージュ」として本作を構想していった。その中で白羽の矢が立ったのが大友克洋。自身も山中のファンだという大友は、りんたろう監督からの打診を即決。山中貞雄自身の写真も数枚しかなかったというが、見事に特徴を捉えたキャラクターとなった。
また、本編中の「鼠小僧次郎吉 江戸の巻」のキャラクターデザインは兼森義則が手がけているが、このパートにはさまざまなモチーフが散りばめられている。アニメファンのみならず映画ファンには、そういった作り手の遊び心を見つけるのも楽しみの一つだろう。また、これから日本映画の名作に触れたいと思う人にも23分の作品なので、入門編としても最適だ。
本作の上映に合わせ、【りんたろうMEETS山中貞雄】と題し、現存する数少ない山中作品の中から「丹下左膳余話 百萬両の壺」「河内山宗俊」「人情紙風船」の傑作3本を同時上映。また、【りんたろう自選作品集】として、「カムイの剣」「幻魔大戦」といったメインストリームな作品から「48×61」「オサムとムサシ」「火の鳥 鳳凰編」ほか滅多にスクリーンではお目にかかれないオルタナティブ的な作品まで日本アニメ史に刻まれる名作が一挙上映される。タイムテーブルと、日本アニメーション界の重鎮・丸山正雄プロデューサーをはじめとしたゲストトークなど詳細は公式HP(https://nezumikozo-jirokichi.com/)で告知している。
11月23日から東京・ユーロスペースで上映。