俳優、監督、プロデューサーとして活躍するベン・アフレックが、人工知能(AI)が映画産業を破壊するとの懸念に対し、むしろ業界の発展につながる可能性を示唆した。米CNBCの「Delivering Alpha」サミットのパネルディスカッションに参加したアフレックは、AIによる映画製作について「現時点では不可能だ」と断言。「将来的にも、その可能性は極めて低い」と述べた。
「AIはエリザベス朝風の素晴らしい模倣詩を書くことはできる。しかしシェイクスピアは書けない」と述べ、AIには真の芸術創造は困難だとの見方を示した。
一方で、映画製作における「より労力のかかる、創造性の低い、高コストな部分」でAIが活用できると主張した。
マット・デイモンと共同で制作会社アーティスツ・エクイティを運営するアフレックは、AIの活用によってコストが下がれば、より多くのクリエイターが映画製作に参入できる可能性も示唆。
「ハウス・オブ・ザ・ドラゴンを年2シーズン制作できるようになるかもしれない」と述べ、AIが作業効率を向上させる可能性を指摘した。VFX業界については「すでに影響が出ている」とコメントし、「多額のコストがかかっていた作業が、はるかに安価になるだろう」と述べた。
アフレックの発言は、AIに警戒感を示す他のハリウッドスターとは一線を画している。俳優のニコラス・ケイジは「AIは私たちの表現手段を奪おうとしている」と警鐘を鳴らしており、ジョン・キューザックも「犯罪的な企て」と非難している。先のSAG-AFTRAストライキでも、AIの使用制限は主要な争点となっていた。
これに対しアフレックは「AIは職人だ。職人は誰かの横に座って技術を見て真似することで家具の作り方を学べる。ただ、それは既存のものの組み合わせに過ぎない。新しいものは何も生まれない」と指摘。AIを脅威としてではなく、映画制作を効率化し、業界全体の可能性を広げるツールとして捉えている姿勢を示した。