昨年夏、ファッションドールを題材にした映画「バービー」と、核開発の歴史を描いた重厚な「オッペンハイマー」という、まったく異なるジャンルの2作品が米国で同時公開された。この意外な組み合わせは、SNSで「バーベンハイマー」と呼ばれ、多くの観客が両作品を立て続けに鑑賞。対照的な2作品の魅力が相乗効果を生み、世界的な社会現象へと発展した経緯がある。
その「バーベンハイマー」現象の再来を期待させる、新たな映画の組み合わせが話題を呼んでいる。今回注目を集めているのは、11月22日に全米で同時公開される「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」と「ウィキッド ふたりの魔女」だ。SNS上では、両作品を掛け合わせた「グリックド(Glicked)」という造語が生まれ、新たなムーブメントの予感に期待が高まっている。
両作品は「バーベンハイマー」さながらの対照的な魅力を持つ。「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」は、24年ぶりの続編として巨匠リドリー・スコットが再び監督を務める壮大な歴史アクション大作だ。アカデミー賞ノミネート俳優のポール・メスカルが、前作の主人公マキシマスの息子ルシアスを演じ、デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカルらハリウッドの実力派が共演している。
一方の「ウィキッド ふたりの魔女」は、不朽の名作「オズの魔法使い」の前日談として、「悪い魔女」となるエルファバと「善い魔女」となるグリンダの出会いと友情を描く華やかなミュージカル作品。2003年のブロードウェイ初演以来、世界中で1億人以上を動員してきた伝説的舞台の映画化だ。人気歌手のアリアナ・グランデと、実力派のシンシア・エリボが主演を務める。
興行収入の予測では、北米初週で「ウィキッド ふたりの魔女」が1億ドル、「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」が6500万ドルと見込まれ、合計1億6500万ドルの大台に達する見通しとなっている。米国の劇場チェーンでは、ローマ兵の衣装を着たスタッフがチケットもぎりを担当したり、「オズの魔法使い」の世界観を再現した撮影スポットを設置したりと、両作品の世界観を楽しめる仕掛けも用意している。
映画業界は新型コロナウイルスが収束した今も観客動員数の回復に苦心しており、現状は19年比で27.2%減という厳しい状況が続いている。複数の注目作品の同時期公開は、映画産業全体にとって追い風になることが期待されている。
なお、日本では「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」は公開中。「ウィキッド ふたりの魔女」は2025年春の公開を予定している。