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村田沙耶香「消滅世界」が映画化 「コンビニ人間」前夜に描かれたベストセラー小説

映画.com 2024年11月26日 10時0分

 村田沙耶香氏の小説「消滅世界」が映画化されることがわかった。現在累計170万部を超える芥川賞受賞作「コンビニ人間」直前の2015年12月に刊行された長編小説。超少子化の先――「性」が消えゆく世界で激動する「恋愛」「結婚」「家族」のあり方に翻弄される若者たちを描く。

 村田氏は03年「授乳」で第46回群像新人文学賞優秀作、09年「ギンイロノウタ」で第31回野間文芸新人賞、13年「しろいろの街の、その骨の体温の」で第26回三島由紀夫賞を受賞。そして16年には、「コンビニ人間」で第155回芥川龍之介賞に輝いた。「コンビニ人間」は18年にアメリカとイギリスで出版されたほか、30カ国以上で翻訳された。イギリスBBCが選ぶ20年最高書籍、 アメリカのザ・ニューヨーカー誌のベストブックスに選出。「消滅世界」も来年、アメリカとイギリスで翻訳の刊行が決定している。

 村田氏は自身初となる映画化について「私の個人的な感覚」と前置きしつつ、「監督さんの作家性や俳優さんたちのその瞬間の演技など、私には想像がつかないもので化学変化のようなことが起き、映像という形に凝縮されて新しく生まれ直すことなのかな」と映像化に対しての考えを述べ、さらに「まだ未知の世界で想像できませんが、とても楽しみにしています。」と完成を待つ現在の心境を寄せた。

 脚本と監督は、映像ディレクター・川村誠。MTV出身の川村は、「RADIOHEAD」「OASIS」などのフェス/ライブ映像や、「BOOM BOOM SATELLITES」「BIGMAMA」など様々なアーティストのミュージックビデオを制作。その他CMやショートフィルム、NHK大河ドラマドキュメンタリーなど多岐にわたるフィールドで独自の世界観を築いてきた。その映画的・音楽的感性を発揮し、本作では繊細かつ耽美な異世界観を追求。本作が長編映画の監督デビュー作品となる。

 本作の撮影は2024年6月に実施され、現在編集中。出演者や公開情報の詳細は後日発表される。

 村田氏、川村監督のコメントは以下の通り。

【村田沙耶香】
私の作品が映像になるのはこれが初めてです。私の個人的な感覚ですが、映像になるということは、言語で制作した自分の作品世界が、監督さんの作家性や俳優さんたちのその瞬間の演技など、私には想像がつかないもので化学変化のようなことが起き、映像という形に凝縮されて新しく生まれ直すことなのかな、と思っています。自分の作品とは違う映像の『消滅世界』に広がるのがどのような光景なのか、まだ未知の世界で想像できませんが、とても楽しみにしています。

【川村誠】
想像を超える規格外の世界観、耳を疑うようなセリフの数々、
思考を刺激する美しい言葉で綴られた原作と出会い
足元が揺らぐような衝撃を受けました。

この物語から受け取ったイメージを
私の感性で映画として表現する自由をくださった
村田沙耶香さんに心より感謝しています。

これは、自分たちが「正しい」と信じているものの
奥底にある本当のことを探る不思議な思考実験であり
恋愛・結婚・家族―全ての価値観が激動するこの世界で
性に悩み、愛に迷う方々に捧げる映画です。

この狂おしく切ないストーリーを
美しく繊細に映像化することを目指しました。
最高のキャスト・スタッフと共に作り上げた本作を
是非劇場で味わっていただき、今を生きる皆さんの心に
少しでも突き刺さる何かが残れば幸せです。

【あらすじ】
人工授精で、子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為はタブーとされ 恋や性愛の対象は「家庭の外」の恋人か、二次元キャラというのが常識に。そんな世界で「両親が愛し合った末」に生まれた主人公・雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。家庭に性愛を持ち込まない清潔な結婚生活を望み、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園(エデン)で一変する。

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