1972年ミュンヘン五輪で起きた人質テロ――五輪史上最悪の事件として、今もなお語り継がれている歴史的な1日を基に描かれる「September 5(原題)」が、「セプテンバー5」の邦題で、2025年2月14日から公開されることが決定。あわせて、予告編と場面写真が披露された。
日本人選手のメダルラッシュに沸いた夏のパリが記憶に新しいオリンピック。その長い歴史の中で今なお大会史上最悪の事件として語られているのは、1972年9月5日ミュンヘンオリンピックでの、パレスチナ武装組織「黒い九月」による“イスラエル選手団の人質事件”だ。本作は、突然、世界が注目する事件を中継する事となったTVクルーたちの視点から、エスカレートするテロリストの要求、錯綜する情報、冷戦下で機能しない現地警察、刻一刻とテロリストが定めた期限が迫るなか、事件の発生から終結までの1日をノンストップで描き出す。
全世界がテロリズムの脅威を、生中継を通して初めて目の当たりにしたその日、放送のルールが未だ明確化されていない時代に「報道する事の自由」「報道される被害者の人権」「報道がもたらす結果の責任は誰にあるのか」といった現代のSNS社会にも通じる、私たちの倫理観を試す問い掛けが投げかけられる。いち早く上映されたベネチア国際映画祭では圧倒的な称賛を受け、賞レースでの注目候補となっている。
日本版予告は、ミュンヘンオリンピックのスポーツ中継を手掛けるTVクルーたちの様子で幕を開ける。活気のある「平和の祭典」のさなか、銃声と思わしき音でクルーたちの顔に影が差す。「武装したテロリストがイスラエル選手団を襲った」「選手が人質に取られている」という警察発表があると事態が一変。当時、事件現場から100キロ以内にいたのは、ニュース番組とは無縁のスポーツ番組の放送クルーのみ。予測不可能な事態に混沌とした現場を全世界が生中継で見守る中、迫りくるタイムリミットと報道する者の葛藤、手に汗握る圧倒的緊迫感が伝わってくる。
脚本・監督を担当したのは、新鋭ティム・フェールバウム、終末世界を舞台にした「HELL」など、ジャンル映画で培ったサスペンス的演出技術を、社会派の作品に見事に融合させている。キャスト陣には「ニュースの天才」でゴールデン・グローブ賞ノミネートのピーター・サースガードと、「ありふれた教室」のドイツ人女優レオニー・ベネシュ、「パスト ライブス 再会」のジョン・マガロなど、名優の呼び声高いバイプレイヤーたちが集結している。
「セプテンバー5」は、25年2月14日に全国公開。