染谷将太、峯田和伸、夏帆が、甫木元空監督作「BAUS 映画から船出した映画館」に出演することがわかった。公開日は2025年3月21日に決定し、特報とティザービジュアルもお披露目された。
本作の題材は、映画上映だけに留まらず、演劇、音楽、落語など、「おもしろいことはなんでもやる」という無謀なコンセプトを掲げ、多くの観客と作り手に愛されながら30年の歴史を築いた吉祥寺バウスシアター。14年の閉館から遡ること約90年、1925年に吉祥寺に初めての映画館・井の頭会館がつくられ、51年にはバウスシアターの前身となるムサシノ映画劇場が誕生していた。劇中では、時流に翻ろうされながらも劇場を守り続け、娯楽を届けた人々の姿を描く。
染谷は、兄・ハジメと思いつきで青森から上京し、成り行きで吉祥寺にできた井の頭会館に勤めることになるサネオを演じる。サネオの兄・ハジメ役には、ロックバンド「銀杏BOYZ」の峯田。夏帆が、井の頭会館で手伝いとして働くうちにサネオと出会い、のちに妻となるハマ役を務める。活弁士として奮闘しながら、常に突拍子もないアイデアを持ち込むハジメ。そんな兄を堅実にサポートしながら、ある日突然劇場の社長に任命され、さらなる発展を目指し始めるサネオ。そしてふたりをそっと見守りながら、持ち前の芯の強さで家族を支えるハマ。実力派俳優陣の演技に注目だ。
監督を務めるのは、バンド「Bialystocks」のボーカルとしても活動し、映画「はるねこ」「はだかのゆめ」でも知られる甫木元。「吉祥寺に育てられた映画館 イノカン・MEG・バウス 吉祥寺っ子映画館三代記」(著:本田拓夫氏/文藝春秋企画出版部発行・文藝春秋発売)を原作に、青山真治監督が温めていた脚本を、22年3月の青山監督の逝去を機に甫木元監督が引き継ぎ、執筆した。劇中の音楽は、吉祥寺バウスシアターや青山監督とも縁深い大友良英が担当する。
特報は、井の頭会館に目を輝かせるサネオとハジメから始まり、懸命に活弁をするハジメや入り口で客を呼び込むサネオなど、映画館を中心に忙しない日々を送るさまが切り取られている。ティザービジュアルは、映画館の舞台に腰かけるサネオの佇まいが印象的。大きなスピーカーが吉祥寺バウスシアターを彷ふつとさせ、「『あした』は、暗闇から始まる。」というコピーとサネオの表情とが相まって、まだ見ぬ未来への希望や静かな熱狂を感じさせる仕上がりだ。
「BAUS 映画から船出した映画館」は、3月21日から東京・テアトル新宿ほかで全国公開。キャスト陣と甫木元監督のコメントは、以下の通り。
■染谷将太(サネオ役)
バウスシアターは私にとって青春の場所でした。いつも映画を観に行くと誰か友人がいて、語り合う、爆音映画祭に皆で集まり、心踊る。忘れられない劇場です。
そして敬愛なる青山真治さんの最後の本がバウスの映画だったという、この事実に脳天を殴られたような衝撃を喰らいました。プロデューサーの樋口さんが私に言うのです、「青山の呪いに乗っからないか?」と。私にとっては最高な呪いでした。呪いにかかったその先に待ってくれていたのは甫木元空氏。最高な男なんです。最高な男の元に集まるスタッフと共演者の方々は勿論最高で、現場はまるで夢の中に飛び込んでいるようでした。その夢の時間を甫木元監督の寛大な心で全て包み込んでくれ、魂に火を灯してくれ、最高な映画を生み出してくださいました。映画が好きな方も、そうでない方も、いつかの記憶の旅をしに、劇場まで来てくださったら幸いです。
■峯田和伸(ハジメ役)
僕は吉祥寺バウスシアターで色んな映画を見ました。あの時、もしかしたら暗闇の空間で、僕も映画に見られていたかもしれない。映画は僕に歌い、映画は僕と踊った。バウスは生き物で、その時代その時代を生き抜いた。貧しさと寝て、戦争に食べられそうになり、吉祥寺という町で沢山のひとに愛された。この映画は、まさしくバウスがその長い人生を尽くす際にみた最後の夢。メリーゴーランドのような走馬灯。ぜひ体験してみてください。
■夏帆(ハマ役)
約90年にわたる長い物語、だれかの記憶の断片のなかで生きているような、なんとも不思議な感覚になったのを覚えています。
なくなってしまった何かに思いを馳せながら、淡々と穏やかに進んでいく撮影現場は、たくさんの映画愛で溢れていて、きっとそれが本編にも滲み出ているのではないかと思います。ぜひ公開を楽しみにしていただけたらうれしいです。
■甫木元空監督
人と人とが暗闇の中で同じ光を見つめる。世界中どんな街にも存在する映画館という場で生きた何気ない家族の物語です。映画館が生まれ、大きくなり、そしてなくなるまでの物語。この普通で争っているのか睦み合っているのかわからない、けれどもそこにかすかな自由と幸福を見つけようと懸命に生きた、無数の(無名の)人々の思いがささやかな一本の映画になりました。たった一歩でも生きてる者と死んでる者とが前に進むために、喪失から生み出される死者を光でつなぎ止めて認識する。心から尊敬するキャスト・スタッフと共に、まるでこの物語を友人に紹介するように映画が作れた事がとても嬉しいです。