「デューン 砂の惑星」シリーズや「ブレードランナー2049」など、新時代のSF映画の金字塔を築いているドゥニ・ビルヌーブ監督が、「スター・ウォーズ」の監督就任を明確に否定した。その背景には、幼少期からの深い愛着と、作品への鋭い批判が交錯している。
2019年の「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」(J・J・エイブラムス監督)以降、長らく映画版の新作が途絶えている「スター・ウォーズ」シリーズ。「ジョジョ・ラビット」のタイカ・ワイティティ監督や「ワンダーウーマン」のパティ・ジェンキンス監督ら実力派が新作への意欲を示すなか、ビルヌーブ監督は米ポッドキャスト番組「The Town」で「スター・ウォーズ」への愛と訣別を告白している。
「10歳の時、『スター・ウォーズ』は銀の弾丸のように私の脳に突き刺さった」と語る監督。特に1980年公開の「帝国の逆襲」については「人生で最も待ち焦がれた映画だった」と当時を回顧。しかし、その熱狂は1983年の「ジェダイの帰還」で大きな転換点を迎える。「15歳だった私と親友は、ジョージ・ルーカスに直接抗議するためロサンゼルスまでタクシーで行こうとしたほど怒っていた」。特にイウォークの登場を「今でも許せない。あれで作品が子ども向けコメディになってしまった」と、40年を経た今なお鮮明な失望感を吐露した。
その批判は現代の「スター・ウォーズ」にも向けられる。「今や『スター・ウォーズ』は自身の神話に凝り固まり、極めて教条的になった。まるでレシピのように、もはや驚きがない。すべてが定式化されてしまっている」。
クライムアクション「ボーダーライン」やSFドラマ「メッセージ」で高い評価を得てきたビルヌーブ監督。その独自の映像美学と哲学的な問いかけは、SF映画の新たな可能性を切り開いてきた。現在は「デューン 砂の惑星」シリーズの最新作「デューン3(仮題)」の構想も進めているが、「フランチャイズではなく、独自の作品作りに戻りたい」との意向を示している。
さらに、映画界全体のあり方についても持論を展開。Netflixに代表されるストリーミングサービスでの制作に否定的な立場を示し、「映画館で物語を共有し、集団で感動を体験することこそが映画の本質。私たちは一人でいるのではなく、共に体験するべきなんだ」と訴えている。