横浜流星と藤井道人監督が長編劇場映画では3度目のタッグを組んだ「正体」の初日舞台挨拶が11月29日に丸の内ピカデリーで行われ、横浜をはじめ、吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈、山田孝之、藤井監督が出席した。
染井為人氏の同名小説(光文社文庫刊)を映画化する本作。横浜が日本中を震撼させた殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けながらも脱走する指名手配犯の鏑木慶一を演じる。姿を変えながら、日本各地で潜伏して逃亡を続ける鏑木と出会うメインキャラクターを、吉岡、森本、山田(杏奈)が演じ、鏑木を追う刑事役として山田(孝之)が出演している。
企画から4年をかけて完成した映画が初日を迎え、藤井監督は「僕自身、映画が完成せずに終わってしまったこともある。止まってしまったこともあります。企画の段階から流星が横にいてくれて、『一緒にこの映画をやろう』と走り切れたこと自体が奇跡だと思う。お客さんに届けられること自体が奇跡だと思っているので、流星に感謝したいと思います」としみじみ。横浜は「出会いは『青の帰り道』でした。そこで映画が完成し、届けられることは当たり前じゃなくて幸せなことなんだと痛感した。この作品も紆余曲折がありましたが、無事に完成して皆様に届けられて心から幸せ」と“盟友”である藤井監督との道のりに思いを馳せながら、「自分のなかでも、ひとつの集大成となった作品になりました」と晴れやかな表情を見せていた。
横浜は、本作で5つの顔を持つ指名手配犯役に扮した。「そういった状況がのしかかってきた時に、28歳の自分でもどうしようと思ってしまう。彼は18の時にそれを背負っている。希望を持つ彼のまっすぐさを維持することは疲弊するものでもあった」と吐露した横浜だが、「鏑木は、人と出会って温かさに触れていく。その出会いが大きなものになっている」と出会いの素晴らしさを実感した役でもあった様子。本作においても「この素敵な方々と出会えて、作品づくりができた」とキャスト、スタッフへ感謝の気持ちを寄せていた。
また5つの顔を持つにちなみ、お互いの意外な一面を発見したエピソードを明かすことになると、「流星くんは万能すぎる。適応能力や運動神経、感性などいろいろできすぎていて、びっくりすることが多かった」という吉岡は、「一緒に餃子を作るシーンがあって。それがめちゃ下手でした。かわいかったです。ちょっと手こずっていらっしゃるのを見て人間なんだなと思いました」と唯一とも思える、横浜の弱点を見つけたと笑顔。森本は「撮影の合間は、流星くんは無口であまりしゃべらなかった」と劇中の関係性から撮影時はほとんど会話をできなかったというが、撮影後に交流を深められたとのこと。「めっちゃおしゃべりですよね。ミステリアスな雰囲気があるから、全然笑わない人だと思っていた。おふざけができない人なのかと思ったらすごく笑ってくれるし、すごくふざけてくれる。そういう一面があるんだとびっくりしました」と話し、「いじるっすよね、俺のこと」とうれしそうに横浜と顔を見合わせた。これには藤井監督も「現場とプライベートで違う。ずっとしゃべりますね。止まらないです」と横浜の素顔について証言していた。
山田(杏奈)も「(横浜と)現場中はあまりしゃべらなかった」というが、「現場の控え室にカメムシがすごく多くて。電気の周りをぶんぶん飛び始めた。それを流星さんが、ひょいっと取ってくれて。すごくスマートだった」とにっこり。司会が「カメムシの匂いがつきそう」と心配すると、「全然いけますね。(匂いは)洗えばいい」とさらりと答え、会場を笑わせていた。また横浜と初共演となった山田(孝之)は「何で、いつ共演するのかと思っていた」そうで、「僕は過去に『破獄』というドラマをやったことがあって。僕が牢獄から逃げ出して、ビートたけしさんに追われる役だった。逃げる側がいかに大変なのかは知っているので、流星はこれをやるのかと。それならば本気で向き合ってみようという気持ちで参加した。この作品で共演できてよかった」と特別な思いがあると語り、横浜も「とにかく幸せな時間でした」と憧れの先輩とぶつかり合い、貴重な経験ができたことに喜びをにじませていた。
「正体」は全国公開中。