日本映画界で数々の伝説を打ち立ててきた「踊る大捜査線」シリーズが、実に12年ぶりに再始動し、柳葉敏郎扮する人気キャラクターの室井慎次が主人公を務める2部作「室井慎次 敗れざる者」「室井慎次 生き続ける者」として製作されることが発表されたのが、今春。それ以降、後編にあたる「生き続ける者」が公開された現在をもってしても、長きにわたりシリーズを支え続けてきたファンのざわめきが止まない。
映画.comでは、シリーズの生みの親ともいえるBSフジの亀山千広社長に緊急インタビューを敢行。全3回でお届けするが、初回は文字通り「製作秘話」を包み隠さず明かしてくれた亀山氏が、第2回では社長業がありながらプロデューサーに復帰するにいたった経緯などを話してくれた。最終回となる今回は、もちろん11月25日に発表された織田裕二のサプライズ出演、そして今後について。映画.comでしか読むことができない秘蔵ネタを、亀山氏が披露してくれた。(取材・文/大塚史貴、写真/間庭裕基)
――青島俊作についても、いつ聞こうかタイミングをうかがっていたのですが…。織田さんの出演はいつ決まったのですか?
亀山:本当に終盤ギリギリです。脚本の決定稿にも載っていないですから。当初は過去の映像を使わせてもらう関係で、各事務所には了解をいただかなければならないので連絡をしていたぐらいです。実はあわよくば、どこかで少しでもいいから出てくれないかな…と僕は考えていたんです。
一方で、柳葉さんも当初から気にされていたのは「織田くんは今回の映画のことを知っているのか?」ということ。ちゃんと説明して、了解も取れているから安心してくれと話しました。なぜかといえば、柳葉さんからすれば「『踊る』は青島なんだ。青島がいるからこそ室井が生きてくるんだ」ということを理解しているからなんですね。
今回の緑のコートですが、実は「踊る」が完結する際、織田さんに差し上げちゃったんです。現物とレプリカの2着。織田さんが「10数年前のデザインだから、サイズが短くて気になる。今のトレンドって長いですよね」とおっしゃるので、新調したんです。
「織田さん、作るってことは、分かっているよね?」とは、撮影の時にお伝えしていました。
柳葉敏郎と室井慎次が、青島を動かしたんです。室井から「青島、君に託す」と。いまの青島の周囲に味方は誰もいない。さあ、どうするんだ? という話になっていくんだと思う。僕にまたオファーがくるか分かりませんが、そういう旅を青島が始めていくんでしょうね。だからね、インタビューの最初に申し上げましたが、「終わらなければ始まらない」んですよ。
――「THE FINAL」で総括していただいた際、「青島イズムの継承」がひとつのテーマになっているとおっしゃっています。根拠もなく無責任なことを申しますが、私は亀山さんが経営者を引退しても、映画から引退することはないと確信しています。とはいえ、これまで培ってきた「亀山イズムの継承」についてはどのようにお考えですか?
亀山:ないですよ、亀山イズムなんて(笑)。正直申し上げて、新たな作家、新たな監督とやる勇気はいまの僕にないです。そこまでチャレンジしたいという、クリエイティブの火はついていません。ただ、自分が始めた、しかもこれだけ皆さんが期待して観てくださる作品が劇場でそれなりの成績を残していることを考えると、「踊る」みたいなIPには関わっていたいし、その責任はあると思います。それ以外、またゼロから企画を立ち上げるほど、僕に時間があるとも思っていないです。だからといって「踊る」を作りたいというわけではないですよ。「作れ」と言われたら、めちゃくちゃ考えますが(笑)。
ショーランナーという言葉があるじゃないですか。これからの「踊る」で、ショーランナーのポジションにいられたら最高ですね。現場にくっついて、カメラ横にいることはもうできないと思うけど、ストーリーやキャラクターの将来について相談を受けたり…というポジションはいいなあ。最終的に、理想的な自分の終着点になるかもしれませんね。まあ、2年後くらいにコロッと変わっているかもしれませんけれど(笑)。