“中華圏のアカデミー賞”と称される台北金馬獎(第60回)で日本資本の映画として初めて最優秀作品賞を受賞し、最優秀編集賞との2冠に輝いた映画「石門」(読み:せきもん)が、2025年2月28日から日本公開されることが決定。あわせて、日本版ポスターも披露された。
本作は、金馬獎を始め、ベネチア国際映画祭ベニス・デイズ部門、トロント国際映画祭、ニューヨーク映画祭、BFIロンドン国際映画祭など世界の映画祭で上映され、いち早く鑑賞した海外の批評家からの激賞が続出。米レビューサイト「ロッテントマト」では、批評家が94%、一般観客は驚異の100%の高評価を獲得している(12月3日時点)。
2019年、中国湖南省の長沙市。単発の仕事で日々お金を稼ぎながら、フライトアテンダントになるための勉強をしている20歳のリン。郊外で診療所を営んでいる両親は、死産の責任を求めて賠償金を迫られていた。ある日リンは、自分が妊娠1カ月であることを知る。子どもを持つことも中絶することも望まなかったリンは、両親を助けるため賠償金の代わりにこの子どもを提供することを思いつくのだが…。
監督は中国湖南省出身のホアン・ジーと東京出身の大塚竜治。中国と日本を拠点に活動する夫妻は、女性の性に関する問題をテーマに映画を共同製作してきた。封建的な湖南省の農村で出稼ぎをする両親と離れて抑圧された生活を送る14歳の少女を描き、ロッテルダム映画祭タイガー・アワードを受賞した「卵と石」、学校で没収されたスマホを売ったことで見知らぬ男たちと知り合うことになる16歳の少女を追った「フーリッシュ・バード」(ベルリン国際映画祭ジェネレーション14+スペシャルメンション賞)を発表している。
最新作「石門」は、望まぬ妊娠に直面した20歳のリン(ヤオ・ホングイ)を主人公に、女性の前にある様々な壁を静かに見つめる作品だ。ホアン・ジー監督が“石門”とは「女性を取り巻く環境に存在する、打ち破りたくてもなかなか突破して先に進めない壁」 だと語るとおり、重々しい“石”の“門”を開く一条の光を求める映画となっている。
全編を固定位置から狙った撮影は、本作の特徴のひとつ。撮影を担当した大塚は「人物だけを切り取るのではなく、社会の中に彼女が立っているという構図でこの物語を伝えたかった」と語っている。また、妊娠期間と同じ10カ月をかけて撮影することで、主人公が10カ月という期間の中で変化していく様が映し出されている。
また「卵と石」「フーリッシュ・バード」に続き、ヤオ・ホングイが主人公リンを演じている。両監督は、女性の“性”に関する問題を、彼女の成長に合わせて別のストーリーとして描いているのだ。
「石門」は、25年2月28日より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネリーブル池袋ほか全国順次公開。コメントは、以下の通り。
【ホアン・ジー】
この映画の共同監督である大塚竜治は、私のパートナーであり、夫でもあります。ある日、彼が言いました。「10ヶ月間撮影しよう。」それは、妊娠から子供が生まれるまでの時間であり、この映画が生まれる時間でもあります。この映画が石の扉を開けて、日本の皆さんに届くことを嬉しく思います。
【大塚竜治】
10カ月の撮影を終える直前にコロナが発生し、撮影は中断を余儀なくされました。その時、私たちは主人公のリンと同じように現実の中で迷い込み、出口を見失ってしまいました。しかし、最終的にその経験がリンの抱える痛みに寄り添い、彼女と共に重い扉を開くきっかけとなり、映画に新たな光を灯すことができました。ぜひ、映画をご覧ください。