アカデミー賞受賞俳優のビリー・ボブ・ソーントンが、大作アクション映画シリーズ「M:i:III」の悪役オファーを辞退していた興味深いエピソードを明かした。米The Playlistのポッドキャストでの対談で、「トム・クルーズを殺そうとする役は演じたくなかった」と率直に語り、「大作映画での悪役は観客の記憶に永遠に刻まれてしまう」と真意を説明した。
さらに注目すべきは、サム・ライミ監督の「スパイダーマン」でグリーンゴブリン役のオファーも受けていた事実だ。長時間のメイク作業を要する役について、「朝4時に起きて5、6時間もメイクをするのは避けたかった」と、現実的な理由も示している。
1955年、アーカンソー州出身のソーントンは、音楽家としてのキャリアからエンターテインメントの世界に足を踏み入れた。81年、親友のトム・エッパーソンと共にロサンゼルスへ移住し、俳優・脚本家への道を歩み始める。その道のりは決して平坦ではなく、栄養失調で入院を余儀なくされるほどの苦労を重ねた。しかし92年、共同脚本を手がけた「運命の引き金」で映画デビューを果たす。転機となったのは96年の「スリング・ブレイド」で、監督・脚本・主演という三役をこなし、アカデミー賞脚色賞を受賞。主演男優賞にもノミネートされ、その才能が広く認められることとなった。
以降、「アルマゲドン」「シンプル・プラン」「バーバー」「バッドサンタ」などの作品で、独自の存在感を放つ演技で観客を魅了してきた。近年はテレビドラマでも精力的に活動し、「弁護士ビリー・マクブライド」での主演や、2022年の「グレイマン」への出演で話題を呼んだ。現在は「イエローストーン」で知られるテイラー・シェリダンが手がける新作ドラマ「ランドマン」に出演中だ。
大作映画の悪役を敢えて避け、自身の芸術性を追求してきたソーントンの選択は、結果としてハリウッドを代表する個性派俳優としての確固たる地位を築くことにつながったといえるかもしれない。