スポーツから事件、未曾有の事故まで現代社会の重要なテーマを掘り下げるドキュメンタリー映画が、2025年も続々と登場する。英ガーディアン紙は2025年に公開予定の注目作を10本を挙げている。
最も世界の注目を集めているのが、テクノロジー界の異端児イーロン・マスク氏に迫る「マスク(原題)」だ。「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」でアカデミー賞を受賞したアレックス・ギブニー監督が、テスラからスペースX、SNS「X」の買収劇まで、マスクの足跡を徹底取材。数年にわたる製作期間と、HBOとユニバーサルによる異例の配給権争奪戦が、本作への期待の高さを物語る。マスク本人は「誹謗中傷作品だ」と反発しているが、トランプ次期政権での要職就任も含め、21世紀最大の実業家の実像に迫る重要な記録となりそうだ。
また、23年6月に世界を震撼させた深海調査船「タイタン」号の悲劇も映像化される。最後にクルーと対面した関係者の証言を軸に、5つの命が失われた真相に迫る。1月下旬のサンダンス映画祭では、ファンクの革命児スライ・ストーンを描いた「スライ・ライブス!(原題)」が注目を集めている。アンドレ3000やジョージ・クリントンら、黒人音楽界の重鎮たちが、その功績と苦悩を語る。
社会派作品では、米国の医療保険制度の闇に迫る「ユナイテッドヘルスケアCEO事件」が製作中だ。CEO射殺という衝撃的な事件の背後にある構造的問題を掘り下げる。
音楽ファン待望の作品として、アマゾンが2500万ドルで権利を獲得したリアーナのドキュメンタリーにも注目が集まる。約1200時間におよぶ撮影素材には、スーパーボウルでの圧巻のパフォーマンスから、素顔の瞬間まで収められているという。
スポーツ界からは、NFLの伝説的クォーターバック、ジョン・エルウェイの半生を描く「エルウェイ」がNetflixで配信予定。スーパーボウルでの栄光から、その後のビジネスでの挑戦まで、その波乱に満ちた人生に迫る。
英ガーディアンが選ぶ2025年注目のドキュメンタリーは、以下の通り。
「スライ・ライブス!(原題)」
スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの軌跡と黒人アーティストの成功が背負う重圧を描く。アンドレ3000やジョージ・クリントンらが出演。1月下旬サンダンス映画祭でプレミア上映後、2月より米Huluで配信。
「マスク(原題)」
世界長者番付首位のイーロン・マスク氏の素顔に迫る。SNS「X」買収やトランプ政権での役職も含め「包括的な描写」を目指す。配給:HBO(米国内)、ユニバーサル(海外)、公開時期未定。
「タイタン(仮題)」
2023年6月に起きた深海調査船タイタン号の悲劇を、最後にクルーを見た人物の視点で描く。2025年内公開予定。
「ユナイテッドヘルスケアCEO事件(仮題)」
」医療保険大手CEO射殺事件の真相と、米国の医療保険制度をめぐる議論を掘り下げる。公開時期未定。
「リアーナ(仮題)」
約1200時間の撮影素材から、スーパーボウルのハーフタイムショーやプライベートまでを網羅。アマゾンが2500万ドルで配給権取得も、公開時期未定。
「プレデターズ(原題)」
NBCの人気番組「To Catch a Predator」の舞台裏と波紋を追う。1月サンダンス映画祭でプレミア上映。
「ライブラリアンズ(原題)」
米国で相次ぐ本の検閲に立ち向かう図書館司書たちの闘いを追う。サラ・ジェシカ・パーカーが製作総指揮。1月のサンダンス映画祭でプレミア上映。
「イッツ・ネバー・オーバー、ジェフ・バックリー(原題)」
30歳で事故死した伝説的シンガー・ソングライターの未公開映像や音声を交えた新作。1月のサンダンス映画祭でプレミア上映。
「アポカリプス・イン・ザ・トロピクス(原題)」
ブラジルの福音派キリスト教運動とボルソナロ政権の関係を探る。2025年内にNetflixで配信予定。
「エルウェイ(原題)」
NFLの伝説的クォーターバック、ジョン・エルウェイの半生を追う。Netflixで配信予定。