2024年11月20日で公開20周年を迎えた宮﨑駿監督作「ハウルの動く城」が本日1月10日の午後9時より、日本テレビ系の「金曜ロードショー」でノーカット放送されます。映画.comでは、概要やあらすじ、キャスト情報のほか、映画をより楽しむためのトリビアについて解説します。
本作は第61回ベネチア国際映画祭でオゼッラ賞、翌年にはニューヨーク映画批評家協会最優秀アニメーション賞を受賞したほか、第33回アニー賞の長編映画部門作品賞や第78回アカデミー賞にノミネートされるなど、海外でも高く評価されました。また、声優ではソフィー役を倍賞千恵子、ハウル役を木村拓哉が務めたことも大いに反響を呼びました。
原作はイギリスのファンタジー作家、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「魔法使いハウルと火の悪魔」。原題である「Howl's Moving Castle」を見て「城が動くって面白い」と宮﨑監督が惹かれたことから製作が決まったようです。ところが作品の主役ともいうべき動く城のデザインから作業をスタートさせるも、城のデザインに悩むことに。宮﨑監督は鈴木プロデューサーと話しながら、大砲や屋根、煙突などを描いたことで、ようやく完成しました。
なお、現在ジブリパークでは「ハウルの動く城」をモチーフとした初の「ウィンターイルミネーション」が2月3日までの期間限定で開催中。“ジブリの大倉庫”の大きなガラス壁面が、アニメーションのコマ送りのような演出でライトアップされているので、機会あればぜひそちらにも足を運んでいただきたいです。
【あらすじ】
父が遺した帽子店で働いているソフィー(倍賞千恵子)は、恋にもオシャレにも消極的で地味な女の子だ。ある日、ソフィーは町で兵士に絡まれているところを、美しい青年に助けられる。その人は不思議な力を持ち、人の心臓を食べると噂されている魔法使いのハウル(木村拓哉)だった。そうとは知らないソフィーは初めて胸をときめかせるが、その夜、突然訪ねてきた荒地の魔女(美輪明宏)に魔法をかけられ、90歳の老婆に姿を変えられてしまう。
このままの姿では家にいることができないと思い、旅に出たソフィーの前に、巨大なハウルの動く城が現れる。旅の道中で助けたカカシのカブ(大泉洋)に導かれるように城の中へ入ると、小さな暖炉には、城の動力源である火の悪魔・カルシファー(我修院達也)の姿が。カルシファーは、ハウルとある契約を交わしたせいで城の外に出られなくなってしまったという。カルシファーのお願いを聞く代わりに姿を元に戻してもらう約束を取り付け、ハウルの弟子・マルクル(神木隆之介)も味方につけたソフィーは、しばらく掃除婦として城で暮らすことに。最初は城の中を無断で整理整頓してしまうソフィーを迷惑がっていたハウルだったが、徐々に彼女のいる生活を楽しみ始める。
【キャラクター/声優】
ソフィー:倍賞千恵子
ハウル:木村拓哉
荒地の魔女:美輪明宏
カルシファー:我修院達也
マルクル:神木隆之介
小姓:伊嵜充則
かかしのカブ:大泉洋
国王:大塚明夫
ヒン:原田大二郎
サリマン:加藤治子
【「ハウルの動く城」をより楽しむためのトリビア】
●収録で台本を見なかった木村拓哉に鈴木敏夫プロデューサーが驚嘆
ハウル役の木村さんですが、ご本人にジブリ作品に出演したいという希望があったことと、木村さんの演技をよく知らない鈴木敏夫プロデューサーが娘さんに尋ねたところ、「男のいいかげんさを表現できる人だと思う」と評したことがきっかけで、ハウルというキャラクターにピッタリではないかと起用されることになったとか。
木村さんといえば、現場で台本を見ないことで知られていますが、鈴木プロデューサーは、セリフをすべて頭にいれた状態で収録に臨んだ木村さんに驚き、「そんな人は後にも先にも彼だけです」と述懐しています。
「ロマンアルバム」の鈴木プロデューサーのインタビューでは、収録の休憩中に木村さんと話したエピソードとして、事前の練習ではあえて声は出さず、お腹の中でしゃべるようにしていたことが明かされています。木村さんいわく「そこで練習をしたらダメになると思った」そうで、鈴木プロデューサーは「演じることの鮮度を、自分の中で保とうとしたんでしょうね」と分析しています。
ちなみに、木村さんはマッドハウス制作の劇場アニメ「REDLINE」でも、主人公JP役を好演していますし、宮﨑監督作「君たちはどう生きるか」では主人公・牧眞人の父親である牧勝一役を演じています。
●あえて“宣伝をしない”宣伝で大ヒット
「ハウルの動く城」は公開当時、物語や設定の具体的な内容をあえて伏せるという“宣伝をしない宣伝”方針がとられました。鈴木プロデューサーは、以前から公開前に作品のあらすじなどを事細かに明かす宣伝に疑問をもっていたそうですが、「千と千尋の神隠し」は宣伝がすごかったから大ヒットしたという声を宮﨑監督が気にして、「今回は余計な宣伝をしないで公開しよう」と提案されたことをきっかけに、徹底して情報をしぼることに決めたそうです。とはいえ「ハウル」は、興行収入196億円の大ヒットを記録しました。
鈴木プロデューサーは「アニメージュとジブリ展」内覧会で、公開前に情報をほとんど出さなかった「THE FIRST SLAM DUNK」を例に挙げながら、宮﨑監督の「君たちはどう生きるか」についても「何の情報もない方が、皆さんの楽しみが増えるはず。先に知っちゃったら喜びを奪ってしまうことになるので、(秘密主義を)貫きます」と話していましたが、その前に「ハウル」ですでに秘密主義の宣伝を実施していたことになります。
●ソフィーと荒地の魔女の名シーンの制作秘話
物語の中盤にて、ソフィーと荒地の魔女が王宮の階段を上るシーンが印象に残っているという方も多いのではないでしょうか。当初、このシーンは、現在の半分の尺で予定されており、シーンの中身も先に階段を上ったソフィーが荒地の魔女に手を差し伸べる内容が考えられていたとか。
ところがジブリ作品に多く参加する腕利きアニメーターの大塚伸治氏が、この場面の作画を担当することになったため、宮﨑監督は大塚氏に細かい芝居を任せたことで、シーン全体の長さを倍にすることにしたそうです。その結果、2人の老女が競いあいながら必死に階段を上るという迫力に満ちた名場面が生まれました。