菊池日菜子、小野花梨、川床明日香が出演し、原爆投下直後の長崎を舞台に、被爆者救護にあたった若き看護学生たちの“青春”を描く「長崎 閃光の影で」が、8月1日に全国公開されることが決定した(7月25日から長崎先行公開)。
本作は、原爆被爆者を救護した日本赤十字社の看護師たちが被爆から35年後にまとめた手記「閃光の影で 原爆被爆者救護赤十字看護婦の手記」をもとに脚本を執筆。脚色を加えて、3人の10代の少女たちを主人公に、“青春”を一瞬にして奪われ、残酷な現実にとってかわられながらも、懸命に生き、命と向き合うことを諦めなかった看護学生の視点で、原爆投下当日から1カ月間の救護活動の日々を克明に描き出す。
空襲による休校のため、長崎に帰郷してきた看護学生のスミ、アツ子、ミサヲ。1945年8月9日11時2分、長崎市に原爆が落とされたことで、家族や恋人と過ごす彼女たちの日常は一変する。地獄絵図と化した街で、救える命より葬る命の方が多くても、彼女たちは未熟ながら看護学生として、人として使命を全うしようとする。
「月の満ち欠け」で第46回日本アカデミー賞新人賞を受賞し、本作が映画初主演となる菊池が演じるのは、久しぶりに帰郷した長崎で過酷な体験をすることになる看護学生の田中スミ役。あどけない等身大の姿は、戦争の落とす暗い影との対比を浮かび上がらせる。菊池は「役者としてではなく一人の人間として在るべき時間を過ごすことができた、スミとしての記憶を丁寧に大切に抱えていたいです」とコメントを寄せた。
NHK大河ドラマ「べらぼう 蔦重栄華乃夢噺」に出演中の小野は、スミの幼馴染で看護学校の同級生・大野アツ子役で出演。人一倍強い信念を持って被爆者救護にあたる少女を熱演する。小野は、「目を背けたくなるような映像が、現実にあったという事実に向き合いながら今自分が生きていることの意味を考え続けるような日々でした」と振り返った。
NHK連続テレビ小説「虎に翼」などで注目を集めた川床は、同じくスミの幼馴染で看護学校の同級生・岩永ミサヲ役。クリスチャンである自らの信仰心と現実のはざまで葛藤する複雑な役どころに挑戦した川床は、「この作品が私たちの今と未来について考えるきっかけとなりますように」とメッセージを寄せた。
監督・共同脚本を務めるのは、自身も長崎出身の被爆三世である松本准平。いつか原爆を題材にした映画で戦争の愚かさについて描き、平和を訴えたいというかねての願いが、長編6作目で実現した。松本監督は、「被爆した亡き祖父のこと、見守り育ててくれた多くの被爆者の方々に想いを馳せながら、この映画に取り組みました」とその思いを明かしている。
長崎原爆投下の前日を描いた黒木和雄監督作 「TOMORROW 明日」のプロデューサーを務めた鍋島壽夫がプロデュースを担当した。
キャストと松本監督のコメント全文は以下の通り。
【菊池日菜子】
どれだけ資料を読もうとも、どれだけ想像を膨らませようとも、当時に辿り着けない不安と闘う日々。
これまでのお芝居で得た経験のどれにも、安心できる材料はありませんでした。
そんな中で自分にできることは考え続けること。
役者としてではなく一人の人間として在るべき時間を過ごすことができた、スミとしての記憶を丁寧に大切に抱えていたいです。
松本監督をはじめ、映画『長崎-閃光の影で-』に関わる全ての方々への感謝と敬愛を込めて、これからを精一杯生きていきます。
終戦から80年が経つ2025年の夏。
私たちが生きた1945年の夏をぜひ劇場で観ていただきたいです。
【小野花梨】
戦後80年。 この80という数字がどこまでも大きくなっていくようにと願いを込めてこの作品に関わらせていただきました。 目を背けたくなるような映像が、現実にあったという事実に向き合いながら今自分が生きていることの意味を考え続けるような日々でした。
【川床明日香】
この作品に参加することは大きな責任を伴うとともに、私にしかできないものでもありました。
撮影中、ミサヲに心を託す瞬間に出会えたように思います。
役者としてこの瞬間に出会えたことは幸せでしたが、ミサヲとして感じた想いは誰にも感じてほしくないとも思いました。
この作品が私たちの今と未来について考えるきっかけとなりますように。
【松本准平監督】
被爆した亡き祖父のこと、見守り育ててくれた多くの被爆者の方々に想いを馳せながら、この映画に取り組みました。被爆の傷跡を抱え、それでも生き、平和を祈り続けてきた故郷――僕はいつか、戦争の悲惨さと原爆の残酷さ、人間の愚かさと、素晴らしさを描く映画を作りたいと念願してきました。
あの閃光の痛みも、熱線や爆風、放射能の苦しみも、全て決してわかり得ませんが、一人ひとりのキャスト・スタッフの想像力と知性、感性、そして想いに支えられました。特に、原爆に直面した人間の身心を演じる という不可能へと挑み、見事に達成してくれた菊池さん・小野さん・川床さんに心からの敬意と感謝を捧げます。
核兵器は要りません。決して人類に似つかわしくありません。80年前のあの日を二度と繰り返さないために、世界中のあらゆる戦争が無くなることを夢見て、本作が平和への想いを繋ぐバトンの一つとなることを祈ります。