米アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは1月23日(現地時間)、第97回アカデミー賞のノミネート作品を発表した。最多ノミネートを獲得したのは、ジャック・オーディアール監督作「エミリア・ペレス」。作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞といった主要部門のほか、撮影賞、国際長編映画賞など12部門で13ノミネートを果たした。スペイン語で展開される今作は、非英語映画としては歴代最多ノミネートとなる。主演のカルラ・ソフィア・ガスコンは、トランスジェンダーの俳優として史上初のアカデミー賞主演女優賞に名を連ねた。
昨年の第96回は、クリストファー・ノーラン監督がメガホンをとった「オッペンハイマー」がオスカー戦線を独走した年だった。作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞という主要部門のほか、編集賞、撮影賞、作曲賞を受賞。本年度は、「オッペンハイマー」のような有力作がなく、競合ひしめく混沌としたオスカー戦線となりそうだ。
12部門13ノミネートの「エミリア・ペレス」に次ぐのが、10部門で並んだ「ブルータリスト」(作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞など)と「ウィキッド ふたりの魔女」(作品賞、主演女優賞、助演女優賞など)の2作品。さらに、「教皇選挙」と「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」の2作品が8部門ノミネートで追随するなど拮抗している。
また昨年は、日本の作品にとっても目が離せないノミネート発表となった。オスカー前哨戦で健闘を続けてきた宮崎駿監督作「君たちはどう生きるか」は長編アニメーション賞、北米興行が好調の山崎貴監督作「ゴジラ-1.0」は視覚効果賞、ヴィム・ヴェンダース監督と役所広司がタッグを組んだ「PERFECT DAYS」は国際長編映画賞にノミネート。「君たちはどう生きるか」と「ゴジラ-1.0」は、その勢いのまま同部門を制する快挙を成し遂げ、日本の作品が異例の2部門受賞と大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。
今年も日本に関連した作品が3本がノミネートされた。伊藤詩織監督作「Black Box Diaries」(イギリス・アメリカ・日本合作)が長編ドキュメンタリー映画賞に名を連ねた。これは日本人として、初の快挙。そして、東映アニメーション製作の短編映画「あめだま」(英題:Magic Candies)が、短編アニメーション部門にノミネートされた。日本映画が同部門に選出されたのは4度目となる。さらに、短編ドキュメンタリー部門で「小学校 それは小さな社会」(山崎エマ監督)から生まれた「Instruments of a Beating Heart」がノミネートを果たしている。
第97回アカデミー賞は、3月2日(現地時間)に米ハリウッドのドルビー・シアターで開催される。
発表されたノミネート作品は、以下の通り。
▽作品賞
「ANORA アノーラ」
「ブルータリスト」
「教皇選挙」
「ウィキッド ふたりの魔女」
「デューン 砂の惑星 PART2」
「エミリア・ペレス」
「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」
「サブスタンス」
「Nickel Boys」
「I'm Still Here」
▽監督賞
ブラディ・コーベット「ブルータリスト」
ショーン・ベイカー「ANORA アノーラ」
ジャック・オーディアール「エミリア・ペレス」
コラリー・ファルジャ「サブスタンス」
ジェームズ・マンゴールド「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」
▽主演男優賞
エイドリアン・ブロディ「ブルータリスト」
ティモシー・シャラメ「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」
コールマン・ドミンゴ「シンシン SING SING」
レイフ・ファインズ「教皇選挙」
セバスチャン・スタン「アプレンティス ドナルド・トランプの創り方」
▽主演女優賞
シンシア・エリボ「ウィキッド ふたりの魔女」
カルラ・ソフィア・ガスコン「エミリア・ペレス」
マイキー・マディソン「ANORA アノーラ」
デミ・ムーア「サブスタンス」
フェルナンダ・トーレス「I'm Still Here」
▽助演男優賞
ユーリー・ボリソフ「ANORA アノーラ」
キーラン・カルキン「リアル・ペイン 心の旅」
エドワード・ノートン「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」
ガイ・ピアース「ブルータリスト」
ジェレミー・ストロング「アプレンティス ドナルド・トランプの創り方」
▽助演女優賞
モニカ・バルバロ「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」
アリアナ・グランデ「ウィキッド ふたりの魔女」
フェリシティ・ジョーンズ「ブルータリスト」
イザベラ・ロッセリーニ「教皇選挙」
ゾーイ・サルダナ「エミリア・ペレス」
▽脚本賞
ショーン・ベイカー「ANORA アノーラ」
ブラディ・コーベット、モナ・ファストボールド「ブルータリスト」
ジェシー・アイゼンバーグ「リアル・ペイン 心の旅」
ティム・フェールバウム「セプテンバー5」
コラリー・ファルジャ「サブスタンス」
▽脚色賞
ジェームズ・マンゴールド、ジェイ・コックス「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」
ピーター・ストローハン「教皇選挙」
脚本:ジャック・オーディアール、協力:トマ・ビデガン、レア・ミシウス、ニコラ・リベッチ 「エミリア・ペレス」
ラメル・ロス、ジョスリン・バーンズ「Nickel Boys」
脚本:クリント・ベントレー、グレッグ・クウェダー、原案:クリント・ベントレー、グレッグ・クウェダー、クラレンス・マクリン、ジョン・“ディバイン・G”・ウィットフィールド「シンシン SING SING」
▽視覚効果賞
「エイリアン ロムルス」
「BETTER MAN ベター・マン」
「デューン 砂の惑星 PART2」
「猿の惑星 キングダム」
「ウィキッド ふたりの魔女」
▽美術賞
「ブルータリスト」
「教皇選挙」
「デューン 砂の惑星 PART2」
「Nosferatu」
「ウィキッド ふたりの魔女」
▽撮影賞
ロル・クローリー「ブルータリスト」
グレイグ・フレイザー「デューン 砂の惑星 PART2」
ポール・ギローム「エミリア・ペレス」
ギャビン・ストラザーズ「マリア」
ジェアリン・ブラシュケ「Nosferatu」
▽衣装デザイン賞
「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」
「教皇選挙」
「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」
「Nosferatu」
「ウィキッド ふたりの魔女」
▽長編ドキュメンタリー賞
「Black Box Diaries」
「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」
「Porcelain War」
「Soundtrack to a Coup d'Etat」
「SUGARCANE シュガーケイン」
▽短編ドキュメンタリー賞
「Death by Numbers」
「I Am Ready, Warden」
「Incident」
「Instruments of a Beating Heart」
「ザ・レディ・イン・オーケストラ NYフィルを変えた風」
▽編集賞
ショーン・ベイカー「ANORA アノーラ」
ダービド・ヤンチョ「ブルータリスト」
ニック・エマーソン「教皇選挙」
ジュリエット・ウェルフラン「エミリア・ペレス」
マイロン・カースタイン「ウィキッド ふたりの魔女」
▽国際長編映画賞
「I'm Still Here」(ブラジル代表)
「The Girl with the Needle」(デンマーク代表)
「エミリア・ペレス」(フランス代表)
「聖なるイチジクの種」(ドイツ代表)
「Flow」(ラトビア代表)
▽音響賞
「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」
「デューン 砂の惑星PART2」
「エミリア・ペレス」
「ウィキッド ふたりの魔女」
「野生の島のロズ」
▽メイクアップ&ヘアスタイリング賞
「A Different Man」
「エミリア・ペレス」
「Nosferatu」
「サブスタンス」
「ウィキッド ふたりの魔女」
▽作曲賞
ダニエル・ブルンバーグ「ブルータリスト」
フォルカー・ベルテルマン「教皇選挙」
クレモン・デュコル、カミーユ「エミリア・ペレス」
ジョン・パウエル、スティーブン・シュワルツ「ウィキッド ふたりの魔女」
クリス・バワーズ「野生の島のロズ」
▽長編アニメーション賞
「野生の島のロズ」
「Flow」
「Memoir of a Snail」
「インサイド・ヘッド2」
「ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!」
▽短編アニメーション賞
「美しき男たち」
「イトスギの影の中で」
「あめだま」
「フシギなフラつき」
「Yuck!」
▽歌曲賞(主題歌賞)
“El Mal”「エミリア・ペレス」
“The Journey”「6888郵便大隊」
“Like A Bird”「シンシン SING SING」
“Mi Camino”「エミリア・ペレス」
“Never Too Late”「エルトン・ジョン Never Too Late」
▽短編実写映画賞
「A Lien」
「Anuja」
「I'm Not a Robot」
「The Last Ranger」
「The Man Who Could Not Remain Silent」