1972年ミュンヘン五輪で起きた人質テロ――五輪史上最悪の事件として、今もなお語り継がれている歴史的な1日を基に描かれる「セプテンバー5」の新たな特別映像「監督編」が、このほど公開された。
オリンピックの長い歴史の中で今なお大会史上最悪の事件として語られているのが、1972年9月5日、ミュンヘンオリンピック開催中に起きた、パレスチナ武装組織「黒い九月」によるイスラエル選手団の人質事件。本作は、突然世界が注目する事件を中継する事になったTVクルーたちの視点で、事件の発生から終結までの1日を90分間ノンストップで描き切る。第97回アカデミー賞では脚本賞にノミネートされている。
監督・脚本を務めたのは、新鋭ティム・フェールバウム。映像は、フェールバウム監督への賛辞が相次ぐ内容となっている。
フェールバウム監督が「俳優が実際に事件に奮闘する姿のドキュメンタリーを作るように撮影したかった」と語り、リアリティを追求した制作手法を明かすと、キャストのレオニー・ベネシュは「(中継室のセットの)小さな部屋にいると実際にイラ立ってくる。当時の緊迫感を身をもって感じられた」と監督の意図を肌で感じていた。
ジョン・マガロも「監督に『できる限り忠実に再現し現実味を持たせる』と開口一番言われた」と語り、ピーター・サースガードも「監督は細部にまでこだわっていた。すべてを完璧に再現してくれた。1972年に戻った気分だった」と告白。中継室のセットでは1972年当時のオリンピック映像が流れ、実際に動く機材を使っていたことなど、撮影を振り返った。
ベテラン俳優のベン・チャップリンは「準備に抜かりなく、頼りになる監督」と43歳のフェールバウム監督に一目を置く。
プロデューサーのショーン・ペンは「監督が作った明確な視点は観客を引き込む」と、テロを描いてきた数ある映画の中でも、今までにないテレビクルーの視点で展開されるという“独自性”を強調。それが、本作を特別なものにしている大きな根拠となっているのだ。
フェールバウム監督は「今は誰もがポケットの中にカメラがあり、どこからもライブ配信ができる。だが過去に戻り、初めて悲劇が生中継された瞬間を見届けてほしい」と説明。スマートフォンで誰もが発信者になれる現在、あえて初めて悲劇が生中継された半世紀前の過去を振り返ることで、現在のフェイクニュースやメディアの在り方などについて改めて考えさせられる本作の一面を熱く語っている。
「セプテンバー5」は、2月14日に全国公開。