名匠クリストファー・ノーラン監督は、マイケル・ケインやキリアン・マーフィーら、気に入った俳優を作品に繰り返し起用することで知られる。しかし、長編デビュー作「メメント」(2000)で主演を務めたガイ・ピアース(「L.A.コンフィデンシャル」)とは、その後は仕事をしていない。その理由を、23年の時を経て俳優自身が率直に語った。
英タイムズ紙のインタビューで、ピアースは最近の上映会Q&Aで「メメント」を観返した際の衝撃を告白。「まだ落ち込んでいる。あの映画での私の演技はひどかった。自分の演技を見ていて嫌になってしまった」と、自身の表現を厳しく評価した。
ピアースは以前、「(ノーラン監督から)『バットマン ビギンズ』や『プレステージ』の話をもらったことはあった」ものの、ワーナー・ブラザース幹部にストップをかけられたことで実現しなかったことを明かしている。今回、その評価は正しかったとピアースは認める。
「私の演技は軽薄な態度を出そうとしていたが、すべてが間違っていた」とピアースは分析する。そして、20世紀を代表する英国の舞台俳優で、映画「アーサー」でアカデミー賞助演男優賞を受賞したジョン・ギールグッドの言葉を引用。「ギールグッドは『いい映画で下手な演技をするな』と言った。でも、私は『メメント』でまさにそれをやってしまった。10点満点で5点だな」
一方で、ピアースは現在、ブレイディ・コーベット監督の「ブルータリスト」での演技が高く評価され、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされている。俳優としての真摯な姿勢が実を結んだといえそうだ。