実力派の俳優として数々のスクリーンで鮮烈な印象を残す俳優・波岡一喜が、福山功起監督作の『夜だから』に主演。本作は千葉美裸演じる女性ダンサーと、波岡演じる寡黙な工場勤務のタイチが出会い、劇的に変化していく男女の内面と関係を、バイオレンスとセックス、京都の美しい景色を背景に描いていく異色作。「挑戦的なことが多かった」という彼に、作品の話を踏まえ、現在の赤裸々な心境も語ってもらった。
――タイチという主人公は、波岡さんの過去のイメージにはない、弱く静かな男の役です。
「確かに挑戦的な役柄でしたね。これまで攻めの演技が多かったんですが、この役は基本的に受け。そして不安定にもなります。タイチは強くないので、精神的に弱く見えるように――僕は見た目が強いので、そうじゃなくすることを心がけていました。だから、挑戦。静かな男の役って、セリフでまくしたてて説明することはないので、雰囲気、佇まいで表現していく。見た目で失敗しないように準備だけは十分にして撮影に臨みましたが、難しかったです」
――その努力が奏功して、最近ではめずらしい作風に。完成作を観た感想はいかがですか?
「わからない映画ですね。監督にも言いましたが、考える映画ということ。片手間に観ちゃダメで、向き合って、考えて、結論もすぐには出ない。だから、感じ方も人それぞれ。つかめない映画です(笑)。でも、そこがいいところ。暴力やセックス描写もある。経験値によって、境遇によって、答えが変わると思う。昨今、流行っているわかりやすい映画ではないと思うので、語り合って、持ち帰ってほしいですね。映画館で完結しない作品なので」
――それにしても大作系から本作のような作品まで、出演作が途切れないですよね。俳優として充実期にあると思いますが、ご自身では現状については、どう受け止めていますか?
「僕が、ですか 全然充実していないですよ(笑)。2年くらい前、俳優を辞めようと思ったこともあった。不安や葛藤が続いて、このままでいいのかと。0から1にようやく上がって、1ら2にどう上がるかみたいなレベル。100段階でね(笑)。ずっと1のまま。だから、動画で一人芝居を撮ってYouTubeに投稿するとか、会ってない人にひたすら会おうとか、そうすれば何かが変わる、もっと何かがあるような気がして。変化を求めていました」
――ファン視点では、意外すぎる心境です(笑)。2年経った今現在は何か変わりましたか?
「どう変われるか、どうステップアップしていけるか、それは単純に有名になりたいとかではなくて、なんとなく進んでないぞって、自分でわかるんですよね。ドン! とした進みを求めているんですよ。どっかで。仲間内で話していても皆似たように悩んでるんで、わかるわかるってなるんですけど、オレにしかわからないこともある。将来の不安や作品選び、結局は自分で乗り越えないといけないことのわけで。だから日々、悩んでますよね(笑)」
――たとえば、仕事の中でうれしいと感じること、俳優冥利に尽きる瞬間はありますか?
「作品を観てもらえたらうれしい、よかったという感想が出るとうれしい、舞台で拍手、大ヒットするとうれしいですが、それと俳優冥利に尽きる瞬間は別で、そういうことがモチベーションかというとそうでもないですね。それよりはむしろ4ページの長回しが一発OKとか、難しいシーンをやり遂げた時とか、本当に過酷な撮影が終わって、いい作品に仕上がっていた時とか、そういう時のほうが俳優をやっていてよかったと強く思う。だから、またチャレンジしたくなるんですよね。それが俳優が続いている、最大の理由でしょうね」
――今作『夜だから』ですが、挑戦が多かった本作と出会って、“収穫”もあったのでは?
「この作品に出て、撮影が終わって、完成した映画を観た後に、「オレ、ちょっと上がったな」って、思えたんですよ。さっきの0とか1の話じゃないですけど、俳優としての階段を、ちょっと上がれた気がした。それは、やったことがないことをいっぱいやったので、見えない世界が見えた気がしたということ。だから、今までの波岡一喜の芝居とはちょっと違って、その新鮮な感覚って、お客さんと共有できると思う。そこは期待してほしいですね」
映画『夜だから』は、新宿バルト9ほかにて上映中!
© MONOCREROS
取材・構成・撮影/鴇田 崇(OFFICE NIAGARA)
――タイチという主人公は、波岡さんの過去のイメージにはない、弱く静かな男の役です。
「確かに挑戦的な役柄でしたね。これまで攻めの演技が多かったんですが、この役は基本的に受け。そして不安定にもなります。タイチは強くないので、精神的に弱く見えるように――僕は見た目が強いので、そうじゃなくすることを心がけていました。だから、挑戦。静かな男の役って、セリフでまくしたてて説明することはないので、雰囲気、佇まいで表現していく。見た目で失敗しないように準備だけは十分にして撮影に臨みましたが、難しかったです」
――その努力が奏功して、最近ではめずらしい作風に。完成作を観た感想はいかがですか?
「わからない映画ですね。監督にも言いましたが、考える映画ということ。片手間に観ちゃダメで、向き合って、考えて、結論もすぐには出ない。だから、感じ方も人それぞれ。つかめない映画です(笑)。でも、そこがいいところ。暴力やセックス描写もある。経験値によって、境遇によって、答えが変わると思う。昨今、流行っているわかりやすい映画ではないと思うので、語り合って、持ち帰ってほしいですね。映画館で完結しない作品なので」
――それにしても大作系から本作のような作品まで、出演作が途切れないですよね。俳優として充実期にあると思いますが、ご自身では現状については、どう受け止めていますか?
「僕が、ですか 全然充実していないですよ(笑)。2年くらい前、俳優を辞めようと思ったこともあった。不安や葛藤が続いて、このままでいいのかと。0から1にようやく上がって、1ら2にどう上がるかみたいなレベル。100段階でね(笑)。ずっと1のまま。だから、動画で一人芝居を撮ってYouTubeに投稿するとか、会ってない人にひたすら会おうとか、そうすれば何かが変わる、もっと何かがあるような気がして。変化を求めていました」
――ファン視点では、意外すぎる心境です(笑)。2年経った今現在は何か変わりましたか?
「どう変われるか、どうステップアップしていけるか、それは単純に有名になりたいとかではなくて、なんとなく進んでないぞって、自分でわかるんですよね。ドン! とした進みを求めているんですよ。どっかで。仲間内で話していても皆似たように悩んでるんで、わかるわかるってなるんですけど、オレにしかわからないこともある。将来の不安や作品選び、結局は自分で乗り越えないといけないことのわけで。だから日々、悩んでますよね(笑)」
――たとえば、仕事の中でうれしいと感じること、俳優冥利に尽きる瞬間はありますか?
「作品を観てもらえたらうれしい、よかったという感想が出るとうれしい、舞台で拍手、大ヒットするとうれしいですが、それと俳優冥利に尽きる瞬間は別で、そういうことがモチベーションかというとそうでもないですね。それよりはむしろ4ページの長回しが一発OKとか、難しいシーンをやり遂げた時とか、本当に過酷な撮影が終わって、いい作品に仕上がっていた時とか、そういう時のほうが俳優をやっていてよかったと強く思う。だから、またチャレンジしたくなるんですよね。それが俳優が続いている、最大の理由でしょうね」
――今作『夜だから』ですが、挑戦が多かった本作と出会って、“収穫”もあったのでは?
「この作品に出て、撮影が終わって、完成した映画を観た後に、「オレ、ちょっと上がったな」って、思えたんですよ。さっきの0とか1の話じゃないですけど、俳優としての階段を、ちょっと上がれた気がした。それは、やったことがないことをいっぱいやったので、見えない世界が見えた気がしたということ。だから、今までの波岡一喜の芝居とはちょっと違って、その新鮮な感覚って、お客さんと共有できると思う。そこは期待してほしいですね」
映画『夜だから』は、新宿バルト9ほかにて上映中!
© MONOCREROS
取材・構成・撮影/鴇田 崇(OFFICE NIAGARA)