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小林薫インタビュー「完璧じゃないから『深夜食堂』はいいと思う」

Entame Plex 2015年1月31日 15時57分

「ビッグコミックオリジナル」(小学館)で連載中の安倍夜郎の大ヒット漫画を原作に、深夜放送ながら静かなブームで第3部まで続いている人気ドラマ「深夜食堂」が待望の映画化。メニューは酒と豚汁定食だけだが、頼めば大抵の物なら作ってくれる“めしや”の店主を演じるは、ご存じ小林薫。ドラマの映画化話が持ち上がった時のエピソードや、寡黙なマスターを演じる上で心がけていることなど、小腹も心も満たす本作の魅力について聞いた。



――大人気の『深夜食堂』、そして「めしや」のマスターが、今度は映画館で“営業再開”ですね! 個人的な想い入れも強そうなイメージですが、どういう想いで演じていますか?
「そのことはよく聞かれはしますが、別に強い想いとかはなくてね(笑)。僕はゲストにドラマがあって、マスターにドラマがあるわけじゃないと思って芝居しているので、撮影現場でもしゃしゃりでないようにしていますよ。手を抜いているわけじゃないですが(笑)、マスターの場合、そこにいることが重要というか。僕は、路地を入った先の店とマスターが一体化していると思っています。そこも含めて、「深夜食堂」という感覚ですかね」

――なるほど。存在感というか気配というか、確かにマスターを“感じる”構成ですよね。
「実は、僕はけっこう映り込んでいるんですよ。ガラス越しに反射で映っていたりとか、作務衣のブルーがちょっと映っているとか。僕自身がどうのこうのではなくて、マスターの気配さえあれば、不在な感じがしないじゃないですか。だから、最後の最後に『あいよ』ってポッと彼が出てくるだけで、ずっといたことになる。その効果はあると思いますね。反対にマスターのキャラが立ちすぎてしまうと、観ている人もすぐ興味がなくなってしまう気がしますね」



――ところで、映画化については、まさかという想いだったそうで?
「もともとそういう話はあったので意外ではなかったんですが、2クール目が終わった時に映画化の話が持ち上がって、ちょっと早いかなっていう話題にはなりました。要するに、深夜枠のテイストを、もう少しやってからのほうがいいと(笑)。原作などを見ていても、映画が高級って言っているわけではないですが、待っていたかのように映画化することは逆にイージーな気がした。このしんどい深夜枠の30分を10本続けていくことを、もう1クール続けたほうが映画化するにはいいのではないかってことになりましたけどね。

――プラス1クール「深夜食堂」を続けることで、世界観が固まる効果とかありそうです。
「いやいや、そういうことはないです(笑)。かつて似たような場所へ自分たちも通っていたじゃないですか。若い頃とか。こういう業態の店でなくてもね。だから、そこにいる、いた人たちの事情は知っているというか、素人みたいな人がマスターをしていたとか、演劇青年とかね。よく見ましたよ。だから、そういうものだ、みたいなスタンスでいました。撮影現場でもいい意味でゆるくやっていました」



――ドラマ版を観た時は、緻密に計算されたセットと演出のたまものだと思っていました。
「(笑)。まあ、ちゃんと撮っていますが、完璧じゃないから『深夜食堂』はいいと思いますよ。綾田俊樹さんのオネエにしても、もっと作り込む選択肢もあるけれど、化粧がはげちゃっている雰囲気がちょうどいいんじゃないですかね。ストイックにつめて追求するものではなくて、たとえが悪いけれど、それぞれがニセモノ臭い(笑)。でも、そこがいい。松重豊さんのヤクザなどもそうで、いかようにも読める感じがいい。あそこまでキメているスタイルのヤクザって、今います?(笑)。『深夜食堂』はね、その感覚がいいんです」

映画『深夜食堂』は、本日31日より、全国ロードショー!

(C) 2015安倍夜郎・小学館 / 映画「深夜食堂」製作委員会
取材・構成・撮影/鴇田 崇(OFFICE NIAGARA)
ヘアメイク/樅山敦(Barber MOMIYAMA)

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