『カイジ「命より重い!」お金の話』『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』など、これまでに36冊もの著書を手掛け、累計110万部を達成! また、朝の情報番組でコメンテーターも務める注目の若手経済ジャーナリスト:木暮太一が世の中のわかりづらいあれこれを、わかりやすく解説していきます。
今回は「プライベートブランドってなに?」後編。
プライベートブランドがどうやって、なぜできたのか、その仕組みに迫ります。
ーーーーー
(前回のおさらい)
コンビニや大手スーパーでよく見かける、そのお店のマークが入った商品。それはプライベートブランドといい、コンビニやスーパーなど小売店が自分たちで作って売り始めた商品のこと。これは小売店が利益を増やそうと考えた結果生まれ、お客さんにとっても安く買えるメリットがある。そんなプライベートブランド商品はどうやって作られているのか、話はそこから。
———「プライベートブランドの商品って、店員さんが作ってるの?」
いえ、そうではありません。プライベートブランドの商品は、そのスーパーやコンビニの社員が作っているのではありません。別の工場にお願いして作ってもらっているんです。
———「別の工場??」
そうです。これまで○×チョコや似たようなお菓子を作っていた工場があります。この工場はメーカーの仕事を手伝って、メーカーと一緒に商品を作っていました。その工場に“じゃあ、うちのプライベートブランドの商品も作ってくれない? デザインはうちのオリジナルでお願いね”とお願いするんです。
———「へぇ、そうなんだ」
こうするとスーパー、コンビニなどの小売店は自分たちで工場を建てなくても商品を作ることができるんです。一方で、工場側にもメリットがあります。これまで似たような仕事をしている工場だったら、スーパーからお願いされた新しい仕事もできます。
———「なるほど、そうだね」
仕事をくれる会社が増えれば、工場も経営が安定します。これまで、長く不景気が続いていたので、仕事をくれる会社が増えるのは、工場にとってとても嬉しいことなんです。
プライベートブランドは、お店にも工場にもいい話です。
———「じゃあ反対に、どんな悪い点があるの?」
悪い点、というか“注意点”があります。それは“利益を出したいあまり、苦手なジャンルに手を出してしまうこと”です。
そもそもプライベートブランドは、小売店が集客力を活かして考えた、新しいビジネスモデルです。
———「ん? どういうこと??」
小売店には、すでに地域の固定客がいます。チラシで宣伝することもありますが、だとしてもそれほど苦労なく、お客さんに来てもらえます。この来店したお客さんたちに、“うちのプライベートブランド商品の方が安いですよ〜”と売り込めるのがポイントです。
もともと集客力があるから、値段を考える時に、あまり宣伝費を見込まなくていい。
だから、その分値段を安くできるんです。
———「それがいけないの?」
いえ、そうではありません。
プライベートブランドは、この集客力あってこそ、宣伝費をかけなくていいからこそ、利益を出しやすい商品です。でも、利益を出しやすいから、もっと売りたくなります。そして、もっと売ろうとして宣伝したくなります。
しかし、たくさん売ろうとして、多額の宣伝費をかけたら意味がなくなります。
また、商品ラインナップを増やそうとして、普段来店しているお客さんが買いづらいものを、売り出すのもよくありません。苦戦するでしょう。
最近、一部に“高級化”しているプライベートブランド商品があります。高級なプライベートブランド商品を売って、客単価を上げようとしているのです。
でも、高級な商品を買ってもらうには、相応の宣伝やデザインなどが必要です。コストがかかってしまうんです。
———「うーん……」
また、商品企画力も問われます。“類似商品より安いから、うちのを買って♪”と売り込んでいたうちは問題ありません。でも、高級商品、新しいコンセプトの商品をプライベートブランドで出そうとすると、メーカーと同様の企画力・商品開発力が必要になり、メーカーと同じ研究開発、製造設備が必要になるかもしれません。
それがいきすぎると、プライベートブランドの域を超えて、川上から川下まですべてを押さえる一大企業ができあがってしまいます。
そうなると、メーカーが抱える経営リスクまで負ってしまうことになります。
もともと、小売店は、“販売マージン”以上に稼ぐことができませんでした。しかし、プライベートブランドを作れば“メーカー”と同じように利幅を大きくできます。
ところが、利益を追求しようとすると、宣伝費、企画開発費などに多額の費用がかかります。
コストをかけてもっと売り伸ばしたいが、コストを安く抑えなければ成立しない。
この相反することをやろうとしているので、戦略としては非常に難しいテーマだと思います。
以上、「プライベートブランドってなに?」でした。
次回もお楽しみに。
今回は「プライベートブランドってなに?」後編。
プライベートブランドがどうやって、なぜできたのか、その仕組みに迫ります。
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(前回のおさらい)
コンビニや大手スーパーでよく見かける、そのお店のマークが入った商品。それはプライベートブランドといい、コンビニやスーパーなど小売店が自分たちで作って売り始めた商品のこと。これは小売店が利益を増やそうと考えた結果生まれ、お客さんにとっても安く買えるメリットがある。そんなプライベートブランド商品はどうやって作られているのか、話はそこから。
———「プライベートブランドの商品って、店員さんが作ってるの?」
いえ、そうではありません。プライベートブランドの商品は、そのスーパーやコンビニの社員が作っているのではありません。別の工場にお願いして作ってもらっているんです。
———「別の工場??」
そうです。これまで○×チョコや似たようなお菓子を作っていた工場があります。この工場はメーカーの仕事を手伝って、メーカーと一緒に商品を作っていました。その工場に“じゃあ、うちのプライベートブランドの商品も作ってくれない? デザインはうちのオリジナルでお願いね”とお願いするんです。
———「へぇ、そうなんだ」
こうするとスーパー、コンビニなどの小売店は自分たちで工場を建てなくても商品を作ることができるんです。一方で、工場側にもメリットがあります。これまで似たような仕事をしている工場だったら、スーパーからお願いされた新しい仕事もできます。
———「なるほど、そうだね」
仕事をくれる会社が増えれば、工場も経営が安定します。これまで、長く不景気が続いていたので、仕事をくれる会社が増えるのは、工場にとってとても嬉しいことなんです。
プライベートブランドは、お店にも工場にもいい話です。
———「じゃあ反対に、どんな悪い点があるの?」
悪い点、というか“注意点”があります。それは“利益を出したいあまり、苦手なジャンルに手を出してしまうこと”です。
そもそもプライベートブランドは、小売店が集客力を活かして考えた、新しいビジネスモデルです。
———「ん? どういうこと??」
小売店には、すでに地域の固定客がいます。チラシで宣伝することもありますが、だとしてもそれほど苦労なく、お客さんに来てもらえます。この来店したお客さんたちに、“うちのプライベートブランド商品の方が安いですよ〜”と売り込めるのがポイントです。
もともと集客力があるから、値段を考える時に、あまり宣伝費を見込まなくていい。
だから、その分値段を安くできるんです。
———「それがいけないの?」
いえ、そうではありません。
プライベートブランドは、この集客力あってこそ、宣伝費をかけなくていいからこそ、利益を出しやすい商品です。でも、利益を出しやすいから、もっと売りたくなります。そして、もっと売ろうとして宣伝したくなります。
しかし、たくさん売ろうとして、多額の宣伝費をかけたら意味がなくなります。
また、商品ラインナップを増やそうとして、普段来店しているお客さんが買いづらいものを、売り出すのもよくありません。苦戦するでしょう。
最近、一部に“高級化”しているプライベートブランド商品があります。高級なプライベートブランド商品を売って、客単価を上げようとしているのです。
でも、高級な商品を買ってもらうには、相応の宣伝やデザインなどが必要です。コストがかかってしまうんです。
———「うーん……」
また、商品企画力も問われます。“類似商品より安いから、うちのを買って♪”と売り込んでいたうちは問題ありません。でも、高級商品、新しいコンセプトの商品をプライベートブランドで出そうとすると、メーカーと同様の企画力・商品開発力が必要になり、メーカーと同じ研究開発、製造設備が必要になるかもしれません。
それがいきすぎると、プライベートブランドの域を超えて、川上から川下まですべてを押さえる一大企業ができあがってしまいます。
そうなると、メーカーが抱える経営リスクまで負ってしまうことになります。
もともと、小売店は、“販売マージン”以上に稼ぐことができませんでした。しかし、プライベートブランドを作れば“メーカー”と同じように利幅を大きくできます。
ところが、利益を追求しようとすると、宣伝費、企画開発費などに多額の費用がかかります。
コストをかけてもっと売り伸ばしたいが、コストを安く抑えなければ成立しない。
この相反することをやろうとしているので、戦略としては非常に難しいテーマだと思います。
以上、「プライベートブランドってなに?」でした。
次回もお楽しみに。