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福島第一原発 処理水放出からまもなく1年“福島の漁業の現在地”

福島中央テレビニュース 2024年8月21日 19時0分

福島第一原発の処理水の放出が始まって、間もなく1年前です。

漁業関係者が心配した新たな風評被害は確認されず、むしろ食べて応援する動きが国内で広がりました。

こうしたうれしい結果につながった背景に「中国の存在」があったと識者は指摘しています。

放出から1年、福島の漁業がおかれた現在地を探ります。

2023年8月24日から始まった、福島第一原発にたまる処理水の海洋放出。

海洋放出直後、福島の漁師からは…「あまりにも身勝手」「明日は今までの値段だろうけど、明後日はわからない」などの声が上がりました。

多くの漁業関係者が、当時、この放出には反対していました。

相馬市の漁師、石橋正裕さん(45)もその1人です。

■相馬市 漁師 石橋 正裕さん

「風評という部分も、どうなるのかわからままに、十分な説明もないままに、放出されることは納得いかなかった」

処理水の放出によって、福島の魚が売れなくなってしまったら…

原発事故の後、魚介類の出荷制限や度重なる風評被害に苦しんだ10年あまりの歳月を思えば処理水の放出は受け入れられるものではありませんでした。

■相馬市 漁師 石橋 正裕さん

「この相馬の海、相馬の魚に魅力を感じていたので、この魅力ある海を捨てるわけにもいかないし。もっともっと自分が頑張らなきゃなと思った」

ただ、嬉しいことに、福島の水産物を応援しようという機運が全国各地でいっきに広がり、イベントを開けば、たくさんの人が足を運んでくれるようになりました。

処理水の放出から3か月。

石橋さんが相馬市で開いたイベントは、およそ5000人がかけつけ、大盛況に。

■相馬市 漁師 石橋 正裕さん

「自分たちが安全安心な魚をとって、一般消費者に届けるしかできないのは処理水放出前も放出後も変わらない」

処理水の海洋放出は、これまで、8回にわたって行われてきましたが、県によりますと県内では目立った風評被害は確認されていません。

■相馬市 漁師 石橋 正裕さん

「処理水に関する風評はやっぱりすごく不安だったけど、食べて応援してくれる人が多かったのを実感できて、すごく助かった」

おそれていた風評被害はなぜ「応援」という喜ばしい形につながったのか。

処理水の処分方法を検討する政府の小委員会のメンバー福島大学の小山良太教授はこう分析します。

■福島大学 小山 良太 教授

「処理水と福島の海、水産物の問題ではなくて、海外との軋轢の問題に注目が集まった」

それは「中国」の存在です。

処理水を核汚染水と呼ぶ中国など一部の国と地域は、放出直後に日本からの水産物の輸入を全面禁止する強硬措置に乗り出しました。

そのうえ…

■迷惑電話の音声

「あなたたちはなぜ排出するのかあなたたちはバカ。なぜ排出するのか」

中国からの嫌がらせ電話が県の内外で殺到。

小山教授はこうした迷惑行為に反発して、国内での応援が広がった可能性があると考えています。

■福島大学 小山 良太 教授

「(福島を)応援しようっていう雰囲気が醸成されたっていうのはあったんではないかなと」

しかしながら、県外に目を向けてみると、中国の禁輸措置の影響を色濃く受けた漁業者や事業者がいるのも事実。

小山教授は、この問題を「感情」ではなく「科学的な根拠に基づいて」発信を続けることが大切だと主張します。

■福島大学 小山 良太 教授

「科学的なエビデンスっていうのをきっちり国際社会に訴えていくとか、継続的に情報発信していくしかないのかなと思う」

一方の県内。

風評被害についても漁業者の不安は残ります。

■相馬市 漁師 石橋 正裕さん

「まだ廃炉の先が見えていないので、すごく不安」

30年以上続くとされる福島第一原発の廃炉。風評被害の再燃につながりかねないトラブルは、いまも原発のなかで度々発生しています。

石橋さんは、1日も早い廃炉を成し遂げて福島の漁業が次の世代につなげられる安心した海になればと願っています。

■相馬市 漁師 石橋 正裕さん

「いっぱい美味しい魚がとれることを次世代の子たちにも感じさせてもっらて、福島の漁業は自分たちで担うんだという形で、盛り上げてもらえる形にしていきたい」

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