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お金は知っている 支離滅裂の中国金融、量的緩和の一方で利上げに腐心 習近平政権はGDPを粉飾して「高成長」を演出、不都合な真実を隠蔽

zakzak by夕刊フジ 2024年8月30日 6時30分

中国の不動産バブル崩壊不況の底が見えない。鉄鋼、電気自動車(EV)、太陽光発電など多くの分野の過剰生産が深刻化しているにもかかわらず、習近平政権は国内総生産(GDP)を粉飾して「高成長」を演出し、銀行不良債権の増大、ノンバンク破綻など不都合な真実を隠蔽してきた。

以上の恐るべき内実について、日本のメディア多数派は目を向けず、未だに「中国の5%成長」があたかも続いているかのように報じている。そこで筆者は今年2月刊の『中国経済衰退の真実』(産経新聞出版)に続き、8月末には『中国経済崩壊、そして日本は蘇る』(ワニ・プラス)、『中国経済「6つの時限爆弾」』(かや書房)を連続で刊行し、日本の「30年デフレ」からの完全脱却と脱中国依存の同時達成を促している。

要は、共産党独裁政権による生産膨張路線と対外経済攻勢は結局のところ、巨大なブーメランのごとく舞い戻り、中国のモノ・サービス(実体経済)とカネ(金融)を破壊するということだ。そんな観点から、本編は金融に着目してみた。

グラフは中国の商業銀行による新規融資と不動産相場の前年同期比増減率の推移である。12カ月合計でみた新規融資は不動産相場とほぼ連動して動き、今年2月からは前年比マイナスに落ち込み、6、7月は二ケタ台の落ち込みになった。不動産関連の新規融資の大幅減少が影響しているわけだ。

習政権はEVなど製造業の生産規模拡大によって、不動産不況を乗り切ろうとし、中国人民銀行には金融緩和を命じている。今年7月時点では人民銀行による資金発行額は日本円換算で前年に比べて36兆円増えたが、銀行新規融資は7・4兆円減っている。過剰生産は新エネルギー関連から鉄鋼など在来型の多くの業種に及んでおり、過当競争で赤字企業が続出している。商業銀行もおいそれとは積極融資には転じにくいのが実情だ。

そんな状況を反映するのが、企業の銀行当座預金を中心とする要求払い預金の激減だ。人民銀行の統計によると、7月の要求払い預金は前年比で127兆円も減った。企業の当座預金は銀行からの借り入れをそのまま反映するので、その減少は企業が借り入れ額を大幅に減らしていることになる。人民銀行の資金増発分は商業銀行に供給されるが、商業銀行はそのカネを安全資産である国債で運用している。この結果、国債相場が過熱し、国債金利が急速に低下している。西側世界の場合、こんなときは国債を大量発行して財政出動し、景気拡大策をとるのだが、習政権は国有企業を中心とする製造業の生産拡大一本やりである。

他方で、人民銀行は「国債バブル」を懸念し、国債売りによって国債金利の引き上げを画策している。上がりすぎた国債相場が暴落すれば、人民元の信用が崩壊すると恐れるからだ。党が支配する中国金融は支離滅裂である。 (産経新聞特別記者)

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