ドナルド・トランプ次期米大統領は2日、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収を「大統領として阻止する」と改めて表明した。SNSに「かつて偉大で強かったUSスチールが、外国企業に、今回の場合は日本製鉄に買収されることに全面的に反対する」と投稿した。買収問題は民間企業の手に負えない高度な政治的案件となっているが、石破茂首相がトランプ氏と面会できなかったことも痛手になっているとの指摘もある。
トランプ氏は「買収者よ、気をつけろ」とも投稿。国内製造業の復活を掲げる立場から、米国企業を守るとの姿勢を改めて示した。「税制優遇や関税により、USスチールを再び偉大で強くする。すぐにそうなる」と指摘し、外国企業による買収ではなく、大統領として実施する政策で、USスチールの復興を後押しする意向を強調した。
日鉄によるUSスチール買収計画をめぐっては、大統領選の期間中、共和党のトランプ氏が反対を表明。民主党のカマラ・ハリス副大統領も慎重姿勢を示していた。選挙戦で労働者層の支持獲得が問われたこともあり、買収計画が政治問題化していた。
日鉄側は前回のトランプ政権で中央情報局(CIA)長官や国務長官を歴任したマイク・ポンペオ氏をアドバイザーに起用した。ポンペオ氏は8月に「日鉄のUSスチール買収は米国にプラス」と米紙に寄稿したが、トランプ次期政権には起用されなかった。
現在、対米外国投資委員会(CFIUS)が国家安全保障上のリスクがないかを含め審査している。期限は12月下旬となっており、トランプ氏は投稿を通じ、来年1月に就任する前に、現政権の下での審査で買収が承認されてしまわないよう圧力をかける思惑もあるとみられる。
トランプ氏は中国やカナダ、メキシコへの追加関税を打ち出すなど政権を事実上始動させている。「米国第一主義」を明確にして各国に矛先を向けており、同盟国の日本も例外ではないことが明確になった。
経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「対中姿勢を強化しているトランプ次期政権は、経済安全保障の観点から、日本と中国の製鉄産業の関係を警戒していると考えられる。安倍晋三元首相なら米国に飛んでトランプ氏を説得したはずだが、石破首相は面会できなかったことも響いている。今後、買収を成功させるには、米国のファンドが日鉄の株を一定数保有して経営を監視するなどの条件を突き付けられるかもしれない」との見方を示した。