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前立腺肥大症・最新治療 最新の手術法「WAVE」と「ウロリフト」 治療で〝切る、焼く〟ことに抵抗感を持つ人へ いずれも保険OK

zakzak by夕刊フジ 2024年8月3日 10時0分

男性は高齢になるほどだれでもリスクが高まる前立腺肥大症。今回は最新の手術手技を2つ紹介する。従来の治療では効果が得られなかった人にとって〝最後の砦〟となる治療について学んでいこう。

「現在、前立腺肥大症に対する最新の手術法として導入が進んでいるのが、WAVE(経尿道的水蒸気治療)とウロリフト(経尿道的前立腺吊り上げ術)です」と語るのは、四谷メディカルキューブ泌尿器科科長、阿南剛医師。

「WAVE」とは尿道から前立腺に針を刺し、約100度の水蒸気を数秒間噴出することで、前立腺の内腺を壊死(えし)させる術式である。

「治療直後は前立腺がむくんで尿が出にくくなるため、1~2週間は管を入れて排尿する必要がありますが、その後は前立腺組織が崩壊して尿道が広がり、管を外しても排尿が容易になります」

手術にかかる時間は約10分程度で日帰り、もしくは入院は1~2泊。2022年9月から健康保険での治療が承認されている。

もう一つの最新治療である「ウロリフト」はどんな治療なのだろう。

「尿道内部から前立腺に向けてきわめて小さなインプラントを埋め込み、前立腺そのものを挟み込むようにして吊り上げて尿道を広げ、尿の通りをよくする術式です」

こちらの手術時間は約15分程度で日帰り、もしくは入院は1~2泊。WAVEより5カ月早い22年4月に保険承認を得ている。

WAVEもウロリフトも性機能には影響しないという利点はあるが、特にウロリフトは射精時に精液が膀胱(ぼうこう)に流れ込む「逆行性射精」のリスクがない点で、アメリカでは高い支持を得ている(WAVEにおける逆行性射精の発現率は3%ほど)。

「ウロリフトはインプラントを入れるとはいえ、生体適合性の高い素材なのでMRIも受けられるし、空港の保安検査場でも問題なく通過できる。術後尿道カテーテル留置期間も1日程度と短く術後回復が早い」

TURP、PVP、HоLEPなどの従来型の術式は、頻度は低いが手術によって尿道が圧迫されて尿道狭窄(きょうさく)を引き起こすリスクがあるという。排尿改善のための手術で逆に悪化させたのでは本末転倒だが、ウロリフトにはその危険性が低い。

「ウロリフトは侵襲性が低い分、根治性も低く、10年で2割ほどの人が前立腺肥大症の再発を招きます。しかし、良性疾患の治療で〝切る〟とか〝焼く〟ことに抵抗感を持つ人も多い。ならばまずウロリフトをやってみて、10年後に再発したらやり直せばいい―と考えることもできます。事実アメリカではウロリフトが急速に増加しています。日本でも280施設で導入され約3200症例が施行されました」

阿南医師によれば、この領域では約10年に1度の間隔で画期的な治療法が開発されてきたという。それを期待して、まずはウロリフトを試してみる―というのも一つの考え方だろう。

精度と安全性に優れた治療法が複数ある現代に生きることのメリットを最大限に享受するには、正しい知識を持つことが不可欠。ぜひ有効活用してほしい。 (取材・長田昭二)

=おわり

■阿南剛(あなん・ごう) 四谷メディカルキューブ泌尿器科科長。2008年、名古屋市立大学医学部卒業。聖路加国際病院、東北医科薬科大学病院等を経て、22年4月から現職。専門は前立腺肥大症と尿路結石症の内視鏡手術。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本排尿機能学会専門医ほか。

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